日本ハム中田翔内野手(27)が自己最多タイの4安打5打点で、ソフトバンクの優勝マジック点灯を阻止した。悲壮な主砲に運が力を貸したのは、1点を追う3回無死二、三塁。外角のスライダーを引っ張った打球が、三塁手松田の前、人工芝とアンツーカーの切れ目でイレギュラーした。幸運な左前2点打で逆転に成功。「ラッキーだからな。何ともいえないよ」。一塁ベース上で、白い歯を見せた。

 4回には左越え17号2ラン。8回にはダメ押しの適時打など4安打、5打点はともに自己最多タイ。リーグトップを走る打点は80となった。「乗っているときに、しっかり1本出たのはデカイ」。前日2本塁打のヒーロー大谷が、つなぎ役の2安打。代わって主役を張ったのが、悩める中田だった。

 心境は曇天だった。5日のカード初戦に先制弾を放ち、6日は先制打も、2戦ともその1本ずつで勢いに乗れずにいた。この日の試合前のフリー打撃では、打撃投手に八つ当たり。挑発的な怒声を飛ばし、目の前に転がるボールを投げつけた。栗山監督も「すごくイライラしているときもあった」と練習後、思いを聞こうと動くほど、周囲に振りまく空気は険しかった。

 持ち前の荒ぶる怒りを、首位攻防戦で発散した。中田の奮起で、対ソフトバンクは5月17日の3連戦から4カード連続で勝ち越し。今季のカード負け越しはなくなった。再び4ゲーム差に縮めた。指揮官は「うちらしい形になっている。やっとスタートラインに立てた」と、かぶとの緒を締め直した。血気盛んな主砲は、不敵な笑みで言った。「(ソフトバンク戦は)やっぱ燃えますね。ここまできたからには1番を目指してやりたい」と宣言した。【田中彩友美】