勝負をかけた背走で、チームを救った。日本ハム陽岱鋼がスーパープレーの連続で、大きな白星をたぐり寄せた。9回2死二、三塁。外野陣は極端な前進守備を敷いていた。江川の打球は中堅後方を襲った。「最初から(打球から)目を切って走った」。イチかバチかの全力疾走でフェンス際までたどり着き、見上げて打球を探した。「1回、見えなかったけど、打球がスライスして落ちてきた」。敵地の大歓声をため息に変えるビッグプレー。実は直前に栗山監督から少しだけ守備位置を下げるよう指示が飛んでいた。指揮官の絶妙な機転も勝負のアヤとなり、絶体絶命の危機で1点差を守りきった。

 8月中旬に負った右肋骨(ろっこつ)の亀裂骨折の影響で、4試合連続でスタメンからは外れた。出番は7回に代打で訪れ、その裏から守備へ。先頭の今宮の大飛球が左中間へ飛んだが、痛みを抱える患部をフェンスに直撃させながら好捕。途中出場ながら、難易度の高い2つの好守が天王山初戦を制するポイントとなった。痛み止めも服用しながらの出場。「ここまで来たら優勝したい」。故障再発を恐れない勇気ある姿、守備の名手が見せた勝負強さが、大一番で光り輝いた。【木下大輔】