今日20日に行われるドラフト会議で、1位候補の履正社(大阪)の寺島成輝投手(3年)が同僚の山口裕次郎投手(同)とともに、運命の瞬間を待つ。今季を最後に引退する広島黒田博樹投手(41)と入れ替わりでプロ入りする世代最強左腕は「球史に残る投手になれるように」と、記録にも記憶にも残る大エースを目指す。

 名前を残す投手になる。世代最強左腕から、球界最強の左腕へ。寺島が「運命の1日」を迎える。「人生が変わる日になると思います。楽しみです」。少し伸びた髪をカットで整え、制服姿で大阪・豊中市の学校前に立った寺島は、ドラフト会議を待つ心境をそう表現した。

 前日18日、広島黒田が現役引退を表明した。20年の長きにわたって日米球界をけん引した伝説の投手が、今季を最後にユニホームを脱ぐ。入れ替わるようにプロ野球の世界に飛び込んでいくのが、寺島ら16年のドラフト候補生。「球史に名前を残す選手が引退される。自分も(プロという)世界に入っていく。長く活躍できる選手を目指して行きたい」。時代を継ぐ役割は、U18(18歳以下)アジア選手権で日本の優勝に貢献した世代NO・1左腕の使命になる。

 9月15日のプロ志望表明時に明かした12球団OKの姿勢は、変わらない。ドラフトが近づくにつれて周囲から「どこに行くの?」と聞かれる機会も増えたが「どこでもいい」と返している。特定の球団のユニホームを着て投げる自分の姿は、イメージしない。先輩のヤクルト山田も外れ外れ1位で入った球団で、2年連続トリプルスリーを成し遂げる球界初の選手になった。寺島も、入った球団で運命を切り開く。

 ただ、いずれ背番号を選べる立場になったときには「14番か11番をお願いしたい」と声を弾ませた。14番は中学日本代表、11番は高校日本代表で背負った背番号。履正社で1年目から主戦、高校3年秋はアジア制覇の中心選手になったように、代表の背番号を背負うたびに寺島は成長してきた。プロ野球でもWBC、五輪の舞台に立つ選手になる。そして、伝説の左腕になる。【堀まどか】

 ◆寺島成輝(てらしま・なるき)1998年(平10)7月30日、大阪・高槻市生まれ。2歳で東京に移り、国分寺第九小1年から野球を始める。大阪・茨木東中3年夏に「箕面ボーイズ」で世界少年野球大会に出場して優勝。履正社では今夏の甲子園大会3回戦進出。U18(18歳以下)日本代表としてアジア選手権優勝に貢献。183センチ、88キロ。左投げ左打ち。