引退発表に続き、予告先発も突然だった。今日22日に開幕する日本シリーズで、広島黒田博樹投手(41)は25日の第3戦(札幌ドーム)に先発することが決まった。監督会見に出席した緒方孝市監督(47)があえて登板日を明かした。今季限りで現役を引退する男気(おとこぎ)右腕を日本一で送り出すため、正々堂々と早すぎる「予告先発」に踏み切った。

 だまし討ちなし。逃げも隠れもしない。18日に今季限りでの現役引退を発表した黒田が、第3戦のマウンドに上がる。緒方監督が「黒田だけは言います。彼は3戦目に投げます。ファンの方も注目しているし、楽しみにしていると思う。クロのためではないが、クロと戦うシリーズになる」と明言した。

 黒田はマツダスタジアムでの全体練習で、キャッチボールやダッシュで調整。「(引退は)個人的なこと。ただ、最後の登板が日本シリーズというのは幸せなこと。一緒に戦ってきた仲間に感謝したい」。対策について問われると「いろいろ考えても仕方ない。ベストを尽くすだけ」ときっぱり。シーズンと変わらず、覚悟のマウンドになる。

 札幌ドームでの登板は05年6月14日以来、11年ぶり。当時は3失点で敗戦投手になったが、黒田を象徴する完投でもあった。今回は現役ラスト登板になる可能性もある。早すぎる予告先発の効果も相まって、多くの広島ファンが敵地のスタンドを埋めることが確実だ。「残り2チーム。お互いいい日本シリーズになれば」と黒田らしく意気込んだ。

 現役生活もカウントダウンに入った。地元マツダスタジアムでの登板の可能性はスクランブルの中継ぎか、第7戦か。緒方監督は地元登板を“優先”しなかったことについて「クロとともに日本一を目指すからだ。中継ぎもあるかもしれないよ」。CSファイナルステージを勝ち抜いたのは第1戦ジョンソン、第2戦野村のローテーション。崩してまでの地元登板は黒田自身も望んでいない。

 唯一、黒田の顔が緩んだのは大谷に話題が及んだときだった。「いちプレーヤーとして、それだけのものを持っているというのは興味がある。すぐ近くで見られるのはいいんじゃないかな」。忘れられないシリーズが、幕を開ける。【池本泰尚】