日本ハム岡大海外野手(25)が気迫を前面に押し出した。目を見開き、広島の守護神中崎に歩み寄った。同点の9回2死一、三塁。初球の141キロ直球に背中を反らしたが、間に合わず尻に直撃した。これを合図に両軍ナインがベンチを飛び出した。「(当たったのは)ケツです。僕としても対投手としても、負けたくない」と威勢よく振り返った。結果として西川のサヨナラ本塁打につながった。

 「燃える男」の遺伝子が脈々と流れる。倉敷商-明大の大先輩に楽天星野副会長がいる。直系の後輩として、本能が目覚めた。「ファイターズの選手も何人か当てられていたので」。細身な体同様に食が細く、声もか細い「草食系」だが、勝負どころでは血気盛んに燃え上がる。3回にはジョンソンから内角をえぐるボールを受けたが7球粘り、四球を選びガッツポーズ。「僕の中では1試合目から気持ちが入っている」と言い切った。

 「燃える男」に変貌する儀式がある。打席に立つと一塁側に向かって顔をくしゃくしゃにして歯を食いしばり、全身の力を抜く。ヘルメットのつばを投手の頭に微調整し、射程圏内に捉えてスイッチオン。1点を追う7回には、1死一、三塁で同点の中犠飛をマークした。低めに沈む球に食らい付いた打球はやや浅かったが、三塁から田中賢が好走塁で生還。併殺打を避けなければいけない場面で「外野フライを打ちたいと思っていた。意識はゴロを打たないように」と狙い通りの一打に胸を張った。

 第4戦では好守で勝利を呼んだ。上昇し続ける闘争心。「広島に行っても同じ気持ち。向かう気持ちは忘れない」。進撃の旗手が高らかに気勢を上げた。【田中彩友美】