巨人杉内俊哉投手(36)が、来季の開幕ローテ入りだけでなく、5年後の通算200勝達成を視野に入れた。2日、東京・大手町の球団事務所で契約更改し、現状維持の年俸5000万円(推定)でサインした。ソフトバンク松坂と同じ80年生まれの“松坂世代”は来季で37歳になる。苦しむ同期の中で、右股関節の形成手術からの完全復活を果たしてみせる。

 背筋をピンと張り、迷いなく口を開いた。杉内は来季の目標を聞かれ「開幕ローテーション」と即答した。昨年10月に右股関節を手術し、今季の1軍登板は果たせなかった。だが復活への意欲は、勢いを増すばかりだった。「ローテを守れれば2ケタ勝てる自信はある。厳しい競争になるのは分かっている。ローテを勝ち取りたい」と宣言した。

 意地がある。“松坂世代”の1人として野球界をリードしてきた。だがケガの影響で15年は推定5億円だった年俸も2年連続で5000万円。仲間たちも苦闘の日々を送る。「高校の時にバチバチのライバル心を持ちながらやってましたからね。時代の流れは感じますね」としみじみ言うと、細めた目をグッと開いた。

 「時代の流れに逆走するぐらいの気持ちでいかないと流されちゃいそうな気がする。もがきながら、もっともっと上を目指したい。目標は200勝にありますので。あと58勝ですね」。来季達成の可能性もある8勝での150勝到達は、あくまで通過点。「5年後…達成できない数字じゃない」と40代現役での大記録達成を頭に描いた。

 自信もある。今秋はウインターリーグに登板。宮崎キャンプでもブルペン投球を重ねて「(状態が)8割超えはした感じ」とつかんだ。今オフも体を休めずにスローイング練習を継続する。「真っすぐも戻ってきている。来年すごく楽しみ。オフのトレーニングのテンションが上がります」とやる気をみなぎらせた。

 今季は1軍の試合をテレビで見続けた。いるべき場所に自分がいない現実が、最もつらかった。「客観的に試合を見られていい勉強、経験になった。でもやっぱり野球は見るものじゃないですね」と再確認できた。「いろんな方の支えでもう1度野球ができるチャンスをもらえた。もう1回マウンドでファンの声援を背中に感じながら投げたい」。時の流れに身を委ねず、ワイルドに逆走して完全復活を遂げる。【浜本卓也】

 ◆今季の杉内 2月の春季キャンプはリハビリに費やし、7月19日のBC武蔵戦で364日ぶりに実戦。1回無失点で最速137キロをマークした。イースタン・リーグでは4試合に登板して1勝2敗、19イニングで11失点。その後ペースを落としたが9月中旬に投球練習を再開。11月の宮崎秋季キャンプでは周囲をうならせる投球を披露し、来春キャンプ1軍スタートの可能性も十分。

 ◆今季の松坂世代 ソフトバンク松坂は最終戦となった10月2日の楽天戦で国内復帰後初の1軍登板を果たすも、1回5失点で炎上した。今オフはプエルトリコのウインターリーグに参戦中。ヤクルト新垣は今季限りで現役を引退。6試合に登板し、1勝2敗で防御率6・67と振るわなかった。巨人村田は、セ・リーグのベストナインとゴールデングラブ賞。3年ぶりに打率3割超えをマークした。

 ◆年長200勝 過去に通算200勝を達成した日本球界24人、日米通算2人(野茂、黒田)のうち、39歳以上で到達したのは5人。杉内は36歳シーズンまでに142勝だが、山本昌と黒田も36歳まで144勝とほぼ同じ勝利数だった。