鬼より怖い監督が恐れる恩師から太鼓判を押された。中日森繁和監督(62)の駒大時代の監督、太田誠氏(80)が新指揮官について「森は成功する」と語った。

 森の「も」にアクセントをつける独特の語り口は、軽快だが、重みがあった。「森には我慢強さがあり、情念を人一倍持っている。人望があり、肝っ玉がすわっている。それでいて優しいところもあるんだ」。

 駒大高校3年時に出会った。44年がたったが、関係は途絶えることなく、むしろ濃密に続いた。指導した大学からプロ、コーチ、監督代行と立場が変わっても野球観を共有してきた。森監督の性格や野球に対する姿勢は熟知している。

 昨年9月29日早朝。午後に監督就任が球団取締役会で承認され、直後に会見という運びだったが、それ以前に電話が入った。フライングの就任報告。FA宣言した山口の争奪戦に敗れた際にも、すぐに「ダメでした」と連絡があった。「あいつはそういうところがある。絶対に義理は欠かさない」。2人の濃い関係を示すエピソードだった。

 71年から35年、駒大を率いた。教え子で監督になったのは石毛宏典氏、中畑清氏、野村謙二郎氏に続いて4人目。投手では初めてだ。「どうチームを導くのか興味がある。森はいろいろな監督の下で学び、蓄積してきた。いかに前向きになるかを考えて、なぜ負けたと思うより、勝ったときになぜ勝てたのかと思う人間だから」。4年連続Bクラスの中日が、愛弟子の下で変わっていくと確信していた。

 ◆太田誠(おおた・まこと)1936年(昭11)5月20日、浜松市生まれ。現役時代は主に三塁手。浜松西-駒大-電電東京。東都大学リーグでは2度首位打者に輝くも優勝はできず。社業に専念していた34歳の70年秋に駒大の監督代行になり、71年春から監督。05年まで35年間務めた。東都1部通算501勝は当時最多。優勝はリーグ戦22度、大学選手権5度、明治神宮大会4度。現役では広島新井、日本ハム武田、増井らを指導した。浜松市在住。