楽天のドラフト1位、藤平尚真投手(18=横浜)が、縁起物ずくめでプロ野球の門をたたいた。楽天の育成選手を含む新人14人が5日、仙台市内の泉犬鷲寮に入寮。藤平は横浜高時代の恩師、渡辺元智前監督(72)の直筆色紙に加え、サインも考案してもらった。前監督がサインを考案したのはソフトバンク松坂、DeNA筒香に続いて3人目という縁起物。さらに入寮した部屋は、ヤンキース田中が楽天時代に使っていた出世部屋に決まった。最強の環境が整い、大先輩たちの背中を追う。

 藤平は、室内をぐるりと見渡した。「田中さんも住んでいたことは、さっき知りました。メジャーで活躍されている偉大な方。縁起のいい部屋ですし、誰でも入れるわけではないと思っています。出世部屋にできるかどうかは自分次第。いい部屋、いい環境で頑張ります」。ヤンキース田中が07年から3年間を過ごした10号室。高揚した気持ちは、抑えられなかった。

 大先輩のぬくもりを感じながら、出世部屋にも劣らぬ縁起物を紹介した。高校時代の恩師、渡辺前監督に「目標がその日その日を支配する」という座右の銘を書いてもらった色紙を持参した。「楽天入団が決まった時に欲しいですと言ったら、12月に渡辺前監督の家にお邪魔した時に頂いて。今の目標はとにかく、1軍で早く投げること。新人王とかもいいですけど、1軍で投げないことには始まらない」と言い切った。

 渡辺前監督からはサインの原案も考えてもらった。同校OBではソフトバンク松坂、DeNA筒香に続く3人目の“出世サイン”だ。「ローマ字と楷書を達筆にしたもの2つです。どちらにしようか考え中です」と、縁起物を身の回りに置いてプロ生活をスタートさせる。

 さらに先日、憧れの先輩と遭遇する幸運もあった。都内のトレーニング施設でレンジャーズ・ダルビッシュと阪神藤浪の2人と偶然一緒になった。筋トレやサプリメント摂取の様子を目の当たりにした。「とにかく練習への意識が高いと思った。自分はこれまでサプリメントはトレーニング後だけ摂取していましたが、食後や就寝前も必要だと知りました」と、わずかな時間ではあったが刺激を受けた。

 9日から合同自主トレが始まる。春季キャンプは、すでに1軍への参加も内定しており、球団の期待は高い。運と縁に恵まれた男がまずは第1歩を踏み出した。【栗田尚樹】

 ◆過去の入寮グッズメモ ヤクルトのカツノリは96年、父の野村監督と母沙知代さん同伴で入寮。沙知代さんが方位磁石で家具の配置を決めるなど親ばかぶりを発揮した。05年巨人の星は、漫画「巨人の星」にちなみちゃぶ台を持参した。13年ソフトバンク東浜は出身地・沖縄の守り神でもあるシーサーを持ち込んだ。また昨年は、AKB48のファンという中日石岡がリラックスアイテムとしてミュージックビデオ集を大量に持ち込んだ。