野球用語は、僕たちの日常生活にも深く浸透している。今日もどこかの会社で「全員野球で頑張ろう」と団結しただろうし、合コンで「あの子、ドストライクや」と息巻く男性諸氏もおられよう。今回はキャッチボールの話。「アイツと話してもキャッチボールできない」となれば、心穏やかではいられない。それほどに意思疎通は大事なのだ。

 今年から阪神の新しいキャプテンに就いた福留孝介が味わい深いリーダーシップを発揮した。午前10時40分の宜野座球場。キャッチボール直前、野手を前に口を開く。「試合では同じ人だけに投げることはないんだから…」。そう話した後、ナインはグラウンドに散った。するとどうだ。キャッチボールのパートナーが前日と大シャッフル。誰もが違う顔と向き合って球を投げた。例えば、新外国人キャンベルは1日が江越で、この日は今成と組んだ。

 普通なら同じパートナーとキャッチボールする。あまり見ることがない光景には、ワンプレーに執念を燃やす福留の意図が隠されていた。「そんな大したことじゃないよ」とサラリとしたものだが、続けて言う。