キャンプを視察するOBの評論家から「元気がない」とムードを危惧する声が上がっていた。日本の元気の象徴ともいえるミスターが自ら輪に入り、払拭(ふっしょく)するように大声を絞り出した。

 自らも「元気ハツラツ」をアピールした。10時半ごろに球場に到着し、グラウンドで阿部とあいさつ。左手をグイグイ引っ張るように力強く握手した。高さ2メートルの監視塔の通称「原タワー」にも登り、打撃練習をチェック。ブルペンでは杉内、大竹寛、山口鉄、内海らの投球を見守り、言葉を交わした。大竹寛の時は1球限定で右打席に立ち、力強い直球に「ホ~!」と感嘆の声を上げた。「杉内は非常に良かった。ボールの回転がいい。大竹は今日はまたすごいね! 怖かった~」と天真らんまんにおどけた。

 ブルペン視察に集中し、紅白戦観戦は2回途中から。計5時間、精力的にナインの動きを観察した。坂本勇は「いつもパワーを頂いています」と、あらためてオーラを実感。高橋監督も「特別な存在。グラウンドに来てもらえるとありがたい。選手も声を出すことで意識がより強まる」と感謝した。

 覇権を手放した月日が増えてきた。長嶋氏も「今年は巨人にとって勝たないといけない年」と不退転の1年に位置付けた。ミスターのこの日の雄たけびが、秋空に巨人軍の歓喜の絶叫へと変わる。【広重竜太郎】