名刺代わりの特大弾に、阪神のキャンプ地宜野座が大揺れだ。キャンプは別メニュー調整で屋外フリー打撃を再開したばかりの阪神糸井嘉男外野手(35)の飛距離を危ぶみ、防球ネットの新設を検討していることが20日、分かった。メイン球場の右翼後方で一般道路に面したネットの延伸に動く構え。金本監督の全盛期や福留の加入時にも問題なかった安全対策は、まだ「病み上がり」状態の糸井の超人パワーを裏づける。

 糸井の規格外のパワーが、行政を動かそうとしている。タテジマを着て初の屋外フリー打撃でみせた衝撃の140メートル弾から3日。これまで平穏だったキャンプ地宜野座のメイン球場右翼後方がにわかに慌ただしくなってきた。「糸井ネット」を新設して補強せよ。球場管理の担当者は「検討していかなければいけないと思います」と語った。

 キャンプも中盤に差しかかった17日。それまで右膝関節炎のため別メニュー調整が続いていた糸井が、初めて屋外でのフリー打撃に臨んだ。これまでのうっぷんを晴らすかのように、仰天の打球を連発。その31スイング目。超人がひっぱたいた打球は、右翼芝生席に張られた「タイガース」横断幕の「ス」の部分に突き刺さった。もし横断幕をかすめるように飛べば、芝生席後方にそびえるグラウンドレベルから高さ約15メートルを誇る防球ネットをも越えていたであろう、推定140メートルの特大弾だった。

 金本監督やスタンドのファンも笑ってしまうような飛距離の一打。だが、球場管理担当者だけは笑ってはいられなかったようだ。

 「観客の皆さんへの安全対策としても必要になってくるかもしれません。そういう打球でした」

 金本監督が広島からFA移籍してきた03年に、新たに阪神の春季キャンプ地となった。全盛期を過ごした金本以後も、ブラゼルや福留といった左の強打者が打球を飛ばした。管理担当者によれば、現在、右翼後方に伸びる防球ネットは、通常ならプロでも打球が越えることは決してない高さに設定されているという。だが糸井が放つ長距離弾は完全に想定外。あらためてポテンシャルの高さを示した。