糸井から一気の逆転や! 阪神が2点を追う4回に糸井嘉男外野手(35)の四球を口火に一挙6得点。打者一巡で糸井が2点タイムリーで締めるなど、背番号7が開幕戦以来の貯金1を導いた。前日は日本ハムやオリックス時代にお世話になった高田GMやラミレス監督から「打たないで」とお願いされたがお構いなし。虎の糸井、やっぱり頼りになります!

 匠(たくみ)の技だ。糸井は外角へ逃げるスライダーにグッとこらえ、ハーフライナーで遊撃倉本の頭を越した。2点リードとした直後の4回2死満塁。2点適時打を決め、満面の笑みで右拳をベンチに向けた。「ウエポン(上本)のヒット見たら、火ついてまうやろ!」。打者11人6得点の猛攻を締めくくり、熱い思いがほとばしった。

 糸井 つないで、つないで点を取ったので、僕もつないでいこう、と。(今永は)いい投手だし、今日は攻略できて良かった。

 相手は今永。昨季4試合で防御率1・80と苦しんだ難敵に、猛虎打線は1歩も引かない。2点を追う4回。すべては四球を選んだ先頭糸井の粘りから始まった。1安打2四球で2死満塁。8番梅野が追い込まれながら左前に2点打を転がし、振り出しに戻した。9番秋山が右前打でつなぎ、2死満塁から1番高山の押し出し四球で勝ち越し。2番上本が中前適時打を決め、その一撃に燃えた糸井が技ありの一打を弾ませた。

 「お前、ホームランでいく? それとも打率でいく?」

 日本ハム時代の06年4月、投手から打者転向が決まった直後、当時の大村巌2軍打撃コーチから問いかけられた。「ホームラン、打ちたいです!」。目を輝かせる糸井に、“先生”は「3割を3年やったら1億円もらえるよ」と諭して納得させたという。「確かにあいつは長打力はあるけど、足のスピードがある。塁上で輝ける。だったら数多く塁に出た方がいい」。恩師の目に、狂いはなかった。

 雨天中止になった前日11日。打者転向時の日本ハムGMだったDeNA高田GMから「あまり打たないでくれ」と声を掛けられた。オリックスの巡回アドバイザー時代に助言を受けたラミレス監督からも「ライシュウカラ、ガンバッテ」と“口撃”されていた。恩人たちへの感謝を結果で体現するのだから、さすがだ。

 金本監督 打つ方に関しては、2回裏に戸柱にいかれて空気が悪い中で、はね返したのは褒めてやりたい。(今永打ちは)自信にしてほしいし、今日に限って、つながりはあった。

 指揮官も納得の猛攻を引っ張り、糸井の得点圏打率は両リーグ1位の8割3分3厘だ。チームは2連勝で貯金1。もう、3番糸井の勝負強さなくして猛虎打線は語れない。【佐井陽介】