虎がコイを止めたで~。引き分けを挟んで10連勝を記録していた広島を本拠地・甲子園に迎えての一戦。開幕から好調をキープする阪神鳥谷敬内野手(35)が3回に2点二塁打を放つなど、コイに強烈パンチを決めた。コイの快進撃に待ったをかける白星で、虎が4連勝。こちらも一気の大型連勝といきまっせ!

 これが長年チームの顔を張った男の底力か。鳥谷は何食わぬ表情で「時の人」を打ち砕いた。力みなきスイングでライナーを右翼線に弾ませ、10連勝中のコイに待ったをかけた。

 「なんとか先に点を取って優位に進めたかった。みんながね、つないでチャンスを作ってくれたので。なんとか後ろにつなぎたいという気持ちでした」

 3回。前回登板で9回1死まで無安打投球を演じた広島ドラ1加藤を一気にのみ込んだ。1死から2番上本が追い込まれながら三遊間を抜くと、すかさず二盗成功。3番糸井は丁寧に見極め、四球を選んだ。4番福留は遊撃へのゴロを内野安打に変え、5番原口の押し出し四球で先制。なおも1死満塁。今度は6番鳥谷が1ボールから、甘いフォークを待ってましたとばかりにミートする。2点二塁打でつなぎを結実した。

 「お~久しぶり! もちろん覚えてるよ!」

 沖縄キャンプ中の2月、偶然の再会に声を弾ませた。休日に沖縄県内の病院を訪問。見覚えのある顔が制服姿で立っていた。高島輝一朗くん(18)。出会いは3年前、同病院の小児病棟。中学3年生の球児は急性リンパ性白血病で入院していた。「しっかり治して、また野球頑張ってね」。後日、黒グラブを贈った。

 高島くんは8カ月の入院後、強豪・沖縄尚学で野球部に入った。外野手だが、鳥谷モデルの内野用グラブを使い続けた。2カ月に1回は全身麻酔で注射を打ち、飲み薬を服用する毎日。通学できないほど体調が悪い日も多かった。それでも弱音を吐かない姿を、鳥谷は知人から聞かされていた。高校2年の3月、高島くんは病に打ち勝った。3年間の野球部生活を全うした。感謝を伝えにきた高島くんと3年ぶりに再会し、鳥谷は優しく笑った。

 「よく頑張ったな。オレも頑張らないとな…」

 不動だった遊撃レギュラーの座を失い、三塁手で開幕した14年目。現在、打率は3割9分だ。ゼロから泥臭くはい上がる姿は万人の目に尊く映るだろう。4連勝で首位広島に2・5ゲーム差まで迫り「先発に勝ちがつくためには、しっかり点を取ることが重要。いい試合が続いているかなとは思います」。今まで以上に人間臭い背番号1が主軸に返り咲き、虎は地に足が着いている。【佐井陽介】