神業級の一撃で逆転勝利を決めた。巨人坂本勇人内野手(28)が1点を追う3回1死二、三塁で、阪神能見のワンバウンド寸前のフォークを拾い上げた。チーム初安打となる逆転の2点適時打で、白星を奪い取った。この試合は10試合連続安打と絶好調の4番阿部が休養のため今季初のベンチスタート。主砲不在の中、主将が自身も驚きの秘打で連敗阻止へと導いた。

 体が勝手に動いた。0-1の3回1死二、三塁、カウント2-2からの5球目。坂本勇は鋭く落下した能見の内角フォークに右膝を地面すれすれまで曲げ、バットを下から振り上げた。ワンバウンド寸前ですくった打球は中堅の前で弾み、2者を本塁に迎え入れた。ゴルフスイングのような技ありの決勝打に「真っすぐ系が来るのかなと思っていたけど、たまたま反応できた。結果オーライ。どう見てもたまたまです」と、終始苦笑いだった。

 主将としての強い自覚が体に抜群の反応を生んだ。この試合前の時点で、5本塁打と23打点がそれぞれリーグトップの4番阿部が休養で先発を外れた。主砲抜きで迎えた伝統の一戦。4連勝後の2連敗を避けたい一心が、完全なボール球を安打にするバットコントロールへと導いた。逆転打の直後に二盗も決め、貪欲に追加点を奪いにいく姿勢を示した。「そういう(阿部が不在の)試合で勝ちながら戦っていくのが長いシーズンで大事になる。大きいですね」とうなずいた。

 神業級の一撃には、かつての“天才打者”も驚きを隠せなかった。高橋監督は「勇人にしかできないというか、僕は高めが好きだったので考えられないようなヒットですね」と絶賛。「(坂本勇は)常に自覚を強く持ってやってくれていると思う。慎之助ばっかりに頼るわけにはいかない。慎之助抜きでいいゲームができたので、他の選手も続けてほしい」と主将への高い信頼をあらためて示した。

 指揮官の称賛ぶりを伝え聞いた坂本勇は「次はちゃんとストライクを打てるように頑張ります」と照れくさそうに笑った。形はどうあれ、勝てればいい。チームの先頭に立ち、全身全霊で勝利だけを追い求めてプレーする。【浜本卓也】