ベテランの一振りが、勝利と勇気をもたらした。ロッテ福浦和也内野手(41)が初回2死満塁で走者一掃の適時二塁打を放った。両外国人が不振で離脱。日本人選手だけとなったチーム打率2割未満の打線にとって、試合開始直後の大きな先制点となった。チームの連敗は2でストップ。借金8の5位と苦境は続くが、大型連休初日に快勝だ。

 黒く埋まった右翼スタンドが揺れた。初回2死満塁、福浦が先制の3点適時二塁打を放った。通算2000安打まで残り63本。やはり“俺たちの福浦”が打つと、盛り上がりが違う。本人は「みんなでつくったチャンス。かえせて良かった」と控えめ。二塁上で軽く左手を挙げ、称賛に応えた。

 しぼみかけた好機をものにした。西武野上から伊志嶺、荻野が連打。初回に先頭から連打が出るのは、今季23試合目で初めてだった。1死満塁となり、行け行けムードが膨らんだ。だが、井上が空振り三振。このまま0点なら、流れを失う。だからこそ、福浦は「思い切っていこう」と腹をくくった。カウント1-1からの3球目、外寄り147キロを捉え、左中間を真っ二つに割った。

 伊東監督も賛辞を惜しまなかった。直近10試合は2勝7敗1分け。「こういう状況を救ってくれるのは、外国人かベテランかと思っていた。2死から、よく打ってくれた。最近になく、ベンチも盛り上がった。流れをつくってくれた」。パラデスに続き、ダフィーもこの日2軍降格。日本人だけとなった打線の中で、ベテランの存在が際立った。

 期待に応えるだけの準備をしてきた。24年目の41歳が体にムチを打った。「最近は小さくまとまっていたから」と、今春キャンプでは900グラム超のマスコットバットを目いっぱい長く持ち、満振りした。南国・石垣を襲った寒さにやられ、胃腸炎にもなったが、寝る前のプロテインを日課とした。パワーアップを目指し体重を去年の82キロから90キロ近くまで増やした。「つらいよ、この年で。胃も小さくなってる」。そう言いながら、白米をかきこんだ。

 帰り際「最後にもう1本、打ちたかった」と繰り返し、悔やんだ。8回2死一、三塁で空振り三振だった。「明日も勝てるように気を引き締める」と、もう次を見ていた。【古川真弥】