勝負の間を制した。「勝負事は間が重要。相手との間、自分との間、そこがガチッと合えば結果にも出ると思う」。5回にロペスが四球で歩かされ、次打者席から打席に入るまで約32秒かけた。ほとんどの打席で平均20秒かけずに入るところを1度素振りをして、ゆっくり、ゆっくりと歩を進めた。打席に入ってからもゆっくりとルーティンに入る。1つ1つの動作を丁寧に、構えるまで31秒。合わせると1分以上の時間をかけ、打撃に集中した。

 92打席目にして放った4月27日の阪神戦での弾丸ライナーによる1号は、決して納得がいくものではなかった。滞空時間の長いアーチこそ、スラッガーの真骨頂。「無意識だったけど、コーチからアドバイスを受けて、自分でも感じた」。打ちたい気持ちがリズムも自然と早めていたことを指摘され、助言を真摯(しんし)に受け止める。そんな柔軟な心で打ったビッグアーチだった。

 データがその心を物語った。この日から、球団が新たな取り組みを開始。本塁打に限り、ボールトラッキングシステムによるデータ数値が公開された。打球角度は35度と、昨季のチーム平均の30度に比べ高く上がった。打球速度は159キロで、高さは33メートルだった。こどもの日に描いた放物線。「僕が子どもの頃、ずっとプロ野球選手に憧れていた。今、そういう責任が選手としてある。夢とか、憧れの選手になりたいと思ってもらえたらうれしい」。そのアーチに、子どもたちの夢を乗せる。【栗田成芳】