「今日もやりました!」-。連日のお立ち台で阪神梅野隆太郎捕手(25)が喜びを爆発させた。7回。同点に追いつき、なおも2死一、二塁。勝ち越しの2点三塁打を右中間に運び、0-9からの大逆転奪首を結実させた。恐怖の8番打者の誕生や。

 「恐怖の8番」が試合を決めた。7回。9-9と同点に追いつき、なおも2死一、二塁の場面だ。広島薮田の151キロに梅野が食らいついた。打球は逆方向に伸び、右中間を真っ二つに破る。二塁を蹴り、三塁ベースにヘッドスライディング。値千金の勝ち越し2点三塁打。泥だらけの背番号44が、世紀の大逆転を完結させた。

 「とにかく消極的になったらダメだと思っていきました」

 球場には微妙な空気が流れていた。7回に江越のセーフ、アウトを巡って17分間の中断。セーフの判定がアウトに覆った。だが、梅野に戸惑いはなかった。「(中断時間は)長かったですけど準備は出来ていた」と冷静そのもの。ただ、内心では奮い立っていた。再開直後にはルーキーの7番糸原が同点タイムリー。1学年下の後輩が奮闘する姿も刺激に打席へ向かっていた。

 まさにラッキーボーイだ。ゴールデンウイークに突入した4日ヤクルト戦では今季1号を含む3安打で神宮のヒーローに。前日5日には終盤7回に逆転の2点三塁打を放った。そしてこの日も2安打3打点と3日連続で大暴れ。2日連続のお立ち台では「今日もやりました!」と、絶叫した。

 肝に銘じていることがある。3月のWBCをテレビで見つめた。「やっぱり打ち合いになればなるほど、捕手も抑えたいという思いは強いけど、打たれたら打たれたで、切り替えていかないと」。試合中、頭の中にはさまざまな思いが巡る。引きずることもある。だが、攻守で頭のスイッチを意識的に切り替える。一発勝負の大会。世界の猛者たちを見てその重要性を再認識。9点のビハインドをはね返す大逆転劇も、大量失点に落ち込む一方なら完結しなかったはずだ。

 開幕から先発マスクを任されてこの試合が28試合目。盗塁阻止率は3割7分とリーグトップをキープしている。打つ方では打率1割台と低空飛行を続けてきた男は、黄金週間の大爆発に「いろんな方のご指導いただいて」と笑った。扇の要がどっしりしていればチームは強くなる。【桝井聡】