高卒4年目DeNA平良拳太郎投手(21)が、プロ入り初勝利を収めた。巨人にFA移籍した山口俊投手(29)の人的補償で今季から加入した右腕は、中日戦に先発し5回3安打1失点に抑えた。人的補償で移籍後、初登板でプロ初勝利を挙げたのは初の快挙だった。若手投手の奮闘に、主砲の筒香嘉智外野手(25)が5回に3号ソロで援護。3-1で逃げ切り、借金1で再び勝率5割復帰へ王手をかけた。

 ナゴヤドームに沖縄の風が吹いた。「オリオンビール」のリズムがロッカールームから流れてきた。筒香選曲で祝福の音楽が流された。沖縄出身で、殊勲の平良は「ありがたいです」。5回3安打1失点で初めての勝利に、初めてのヒーローインタビュー。勝利投手の権利を得ての降板後は「見ていることしかできないから、待っていました」。緊張から解放され、笑みがこぼれた。

 FA人的補償で移籍後、初先発のマウンドをラミレス監督はあえてナゴヤドームに選んだ。「マウンドが高いから、サイドスローの投手の変化球が曲がる。ここでは平良に有利に働く」。狙い通り決め球のシンカーがさえ渡り、2戦連発中の4番ビシエドを4回に空振り三振。女房役には同じ沖縄出身の嶺井が支え、同監督は「沖縄にいるかと思ったよ」と、勝利に酔いしれた。

 2カ月半前にはなかった姿だった。沖縄キャンプでの古巣・巨人とのオープン戦で5回無失点で勝利投手。だが開幕1軍はならず2軍暮らしが続いた。先発投手に足りないものを考え「強い真っすぐを投げたい」と決意した。トレーナーに相談すると、胸郭周辺の硬さを指摘され、脇腹から肩にかけて柔軟性をアップさせた。ストレッチポールを使いながら、夜寝る前も、朝起きた後も。「今までは意識していなかった」。下半身から腕までの連動性が増し、球に力が加わり直球の球速は約3キロアップ。前回の巨人戦では5回で5球しかなかった140キロ以上が、この試合では3倍の15球。その姿に同監督も「もう1度投げる権利を得た」と、成長を認めローテの一角に加わろうとしている。

 21歳にして移籍を味わい、プロ初勝利。「本当にいろんなことがあった。いろんな人の支えがあったから勝てたと思う。こうやって使っていただいて、勝つことが(巨人とDeNAの)どちらに対しても恩返しになる。勝ててよかった」。古巣までも思いやりながら、新天地での1勝をかみしめた。【栗田成芳】