阪神のダメ押し弾は鳥谷敬内野手(35)だ。2点リードの8回に弾丸ライナーを右翼席へ。14年目で2番目に遅い開幕133打席目での1発で勝利を決定づけた。4回にも先制タイムリーを放ち、プロ入り最長タイの5試合連続打点もマーク。今日13日に、自己新記録の6試合連続打点でチームの貯金10を導く勢いだ。

 黒いバットから力強い打球が飛んだ。4番福留のアーチで2点リードとした8回、2死走者なしの場面。1ストライクから6番鳥谷が内角直球を腕をたたんで振り抜く。試合を決定づける今季1号が、低い弾道で青色の右翼スタンドに飛び込んだ。その瞬間、マウンドの井納がガックリと膝に手をついた。打った鳥谷は表情を変えることなく淡々とダイヤモンドを1周。強烈なコントラストだった。

 「ホームランバッターじゃないから。狙って打ったわけじゃない。たまたま。でも1点入ったんでね。良かったです」

 試合を動かす先制打も、この男のバットからだった。4回2死一塁。フルカウントから高めのフォークを捉え、左中間にはじき返した。「中谷がよく走ってくれた」。スタートを切っていた一塁走者の中谷が長駆本塁に生還。鮮やかな適時二塁打で、自己最長タイの5試合連続打点とした。

 今季は開幕から好調をキープしている。ところが、この試合まで32試合で長打は4月14日広島戦と同29日中日戦でマークした二塁打2本だけ。なかなか生まれない状況が続いていた。

 それがわずか1日で1号アーチ&二塁打と爆発。開幕133打席目の1発は14年目で2番目の遅さだった。金本監督も「今年は長打とか言わず、本人が好きなように打てばいい。そうは言っても、外野の頭を越えたのは初めて。彼よりオレのほうがホッとしていると思うよ。オレとベンチのほうがね」と笑った。

 これで直近5試合で7安打、10打点と手が付けられない。通算2000安打まであと93安打と順調にカウントダウンも進んでいる。「1つ勝ったことは良かった。また明日です」。表情は変わらない。いつものようにクールに帰りのバスに乗り込んだ。【桝井聡】

 ▼福留、鳥谷の同一試合での本塁打そろい踏みは、16年9月11日ヤクルト戦(神宮)以来、通算6度目。このときチームは5勝1敗。