「闘魂」。ロッテベンチのホワイトボードに、やや角張った字体で書かれていた。書いたのは、他ならぬ伊東監督だった。試合前、泥にまみれた高校時代を思い出していた。母校・熊本工のグラウンドのネット裏には、「闘魂」「根性」と大書きされたボードが置いてあった。「練習中、いつも見ながらやっていた。これだけやられたら、少しは意地を見せて欲しい。もう、気持ちしかないでしょう」。ソフトバンクには、まだ1勝しかしていなかった。プレーボール直前、フェルトペンを取り出すと「遊びで」したためた。

 最初の1発を放った鈴木は「監督が書いたんですか!? 今日は絶対に負けられない。みんな思ってました」と、気持ちが勝った。5回に日本通算250号となる今季1号2ランを放った井口も「諦めずに上を向いていきたい」と熱かった。

 敵地でやっと勝ち、ベンチは沸いた。4安打1点で敗れた今カード初戦。甘い球を見逃し、内容は最悪に近かった。試合後、野手だけの緊急ミーティングが開かれた。伊東監督は「察してくれ」と中身は伏せたが、気持ちを出せと、首脳陣が厳しい言葉で叱咤(しった)していた。この日は好球を逃さず、攻めて、振って、5本塁打12得点。「今日の勝ちをつなげたい」。伊東監督の心中には、借金を20から減らすことしかない。【古川真弥】

 ▼ロッテが5本塁打、12得点でヤフオクドーム今季初勝利。ロッテは今季45試合目で初の2桁得点。ここまでパ・リーグでは、唯一ロッテだけ2桁得点の試合がなかった。また1試合5本塁打以上は15年5月21日西武戦以来で、これも今季初。ヤフオクドームでの1試合5発は、過去10度記録した3本塁打を上回り、球団史上最多となった。