広島が天国に白星を届けた。球団OBの衣笠祥雄氏の訃報を受け、臨んだDeNA4回戦(横浜)。チーム一丸となって7-2と大勝した。偉大な先輩の悲報に誰もが勝利を誓った一戦でDeNAから首位の座を奪い取った。リーグ3連覇を-。衣笠氏の思いも背負い、闘い続ける。

 天に届けとばかりに広島ナインは快音を響かせ、ダイヤモンドを疾走した。宿舎出発時に知った衣笠氏の訃報。空から見守っているであろう偉大な先輩に、広島の伝統を受け継ぐ者たちが雨の中で躍動した。広島野球を前面に。首位に返り咲く白星を届けた。

 緒方監督 一昨年、25年ぶりに優勝したときに声をかけていただいて本当に心から喜んでいただいた。「本当にここから常勝チームを、強いカープをつくりあげてくれ」という言葉をもらったのを覚えている。

 引き寄せられたように、生前、テレビ解説でよく姿を見せていた横浜での弔い戦となった。チームは今季初の3連敗を喫したばかり。流れは決して良くはなかった。それでも立ち上がりから3連打で2点を奪うと、その後も得点を積み重ねた。若い先発中村祐の力投に応え、安部や田中はユニホームを汚しながら1球に執念を見せた。泥臭く、強い精神力もまた、衣笠氏が残してくれた広島野球だ。

 一昨年「レギュラーである以上、常に試合に出続けないといけない。誰にも渡してはいけない」と金言をもらった鈴木も、24日ぶりにスタメンに帰ってきた。一昨年8月24日巨人戦(東京ドーム)で左肩を亜脱臼したときには「衣笠さんになりたいんです。もう、誰にも譲りたくない」とトレーナーに直訴し、シーズン最後までプレーし続けた。昨年、右足首を骨折した地で先発復帰。5回には犠飛で開幕戦以来の打点を記録した。「いつも通り。1点ずつ泥臭く取るのがカープの野球」。弱さを見せることなどできるわけがない。広島野球での弔い星に胸を張った。

 まだやるべきことはある。緒方監督は力強く、誓った。「今年もしっかりとカープの野球をやって、シーズン終了後には優勝と日本一の報告ができるように、我々も精いっぱい戦っていくだけです」。球団初の3連覇こそ最高の手向けになる。【前原淳】