膝を曲げ過ぎず、スッと立つ。力みのない構えも板についてきた。阪神大山悠輔内野手(25)はこの日も気持ちよさそうに、右足にためたパワーを一気にフルスイングで放出した。

2点を追う4回無死。1ストライクから大野雄の内寄り高めスライダーを豪快に振り抜いた。「いいスイングができている中で、狙い球を絞って思い切ってスイングをすることができました」。抜群の角度で打球が上がった瞬間、フェンスオーバーを確信。2戦連発となる7号ソロを左翼ポール際中段席まで届かせ、反撃ムードを高めた。

沖縄キャンプを終えて間もなかった3月上旬。大山は「スタンスの幅をちょっと狭めました」と明かしていた。昨季は膝を曲げ、重心を低く構えていた。4年目の進化を目指した今春、偶然ヒントを手にした。

きっかけはロッテ、巨人で活躍したサブローこと大村三郎氏(現楽天ファームディレクター)の打撃動画。「最初は格好いいなと思って見ていただけなんですけど」。あまり膝を曲げずリラックスした構えに注目し、試すことに決めた。

昨季は低い重心からスイングに向かう際、目線が上がる傾向にあった。この目線のブレを小さくする意味でも、以前より膝を曲げないフォームに挑戦。継続して振り込んだ結果、今季は確実性が増している。

ここ6試合で4本目のアーチを懸け、3戦連続マルチ安打、6戦連続安打を記録。チーム最多の7本塁打、16打点に加え、まだ規定打席に到達していない打率も3割4分7厘と、チーム3冠を狙える位置にいる。

完全に4番に定着した感のある大山に対して、矢野監督の信頼度は高まるばかりだ。「甘い球をしっかり仕留められる。本当にレベルが高い。悠輔自身も自信を持って立っていると思う。見ていて風格もある。まだまだ打ってくれると思う」。指揮官と同じ期待を今、虎党の誰もが抱いている。【佐井陽介】