<さよならプロ野球>

 2014年も多くの選手が球界の第一線を退いた。「さよならプロ野球」で新たな人生を歩み出した元選手を紹介する。

 “阿部キラー”の異名を取った中日小林正人投手(34)は、このオフから裏方の球団広報としてチームを支えている。功労者の小林に用意されたポストは球団広報だった。

 「そりゃ驚きはありました。この球団ではあまり聞いたことがないので。ただ、引退を決意してからは何でもすると決めていました」

 近年の中日では異例の“人事”だった。

 中日一筋12年。3年目のオフに森投手コーチ(現ヘッド)の助言でサイドスローに転向した。左のワンポイントとして頭角を現し、特に巨人阿部には通算27打数4安打と抜群の相性で中日ファンの胸をスカッとさせた。11年には58試合5勝0敗18ホールド、防御率は0・87。驚異的な数字で連覇に貢献した。

 誰よりも練習熱心だった。オフは毎年のように母校・東海大の陸上部や相撲部屋を訪問するなど、積極的な“異業種交流”で理論を吸収。野球王国のドミニカ共和国に自腹で渡ったこともある。

 スター街道を歩んできたわけではない。だからこそ「陰ながら努力している選手を見てほしい」と願う。報道陣を見つければ、必ず声を掛ける。選手の立場を考えてアドバイスをする。「いろんな人にいろんな話を聞くようにしています。どっちも意見があるし、お互いがいいようにしたいですから」。社交的でポジティブ。そして研究熱心。はまり役だった。【桝井聡】

 ◆小林正人(こばやし・まさと)1980年(昭55)8月21日、群馬県生まれ。桐生第一-東海大から02年ドラフト6巡目で入団。プロ入り3年目の05年9月1日阪神戦(甲子園)で初登板も、桧山に頭部死球で危険球退場。通算成績は登板293試合で11勝4敗1セーブ、62ホールド、防御率2・90。愛称コバマサ。181センチセンチ、86キロ。左投げ左打ち。