甲子園を沸かせた選手は時に「怪物」と呼ばれ、ファンを魅了してきました。今年、ドラフト1位で入団した楽天安楽智大投手(18=済美)も高校時代に「怪物」として騒がれました。

 ここでは、ひと足早く取材メモを紹介します。詳しくは27~31日までの紙面連載をお楽しみに。

 こんなにも取材対応がしっかりしている高校生を見たことがない。安楽はうれしいことも嫌なことも、目を見て、自分の言葉で伝えてくる。なぜなのか。「本当は取材とか苦手です。でも田中さんとかダルビッシュさんとか一流の選手は、自分の思ったことをしっかり伝える。だから自分も頑張ろうと思って」。一流と呼ばれる選手のしぐさを常に意識し、どうしたら自分も一流に近づけるのか考え、実践する。

 口で言うのはたやすいが、相当なストレスもあった。最速157キロをたたき出し、高校2年生から「怪物」と呼ばれた。地元ではもちろんスターとなり、投げすぎ論争では海外のメディアも取材に訪れるほどの注目度。ひっきりなしに来る取材陣に、トイレの中まで追い回されたという。「ある時テレビカメラが入ってきました。走り込みの途中に用を足しに入ったら、サボってるんじゃないか?

 って。あれにはびっくりしました」と振り返る。

 普通の高校生であればそれほど無遠慮な取材をされれば、マスコミを遠ざけようとする。しかし安楽は変わらなかった。注目されればされるほど、丁寧に、そして真摯(しんし)に答えた。「ドラフト1位でプロに行くのが夢でしたから」ときっぱり言い切った。プロに行くのであれば野球の実力だけでなく、人間性もしっかりしていないといけない。一言一言の力強さが、そんな考え方を証明していた。

 怪物級の実力と、言葉を携えて、いよいよキャンプを迎える。「あの松井(裕樹)さんでもなかなか勝てないほど、厳しい世界。覚悟はしている」と意気込む。開幕1軍に向けて、これからどんな言葉を聞かせてくれるのか、注目して欲しい。【安楽担当=島根純】