<ソフトバンク7-3ヤクルト>◇3日◇福岡ヤフードーム

 ソフトバンクが下位打線の爆発で交流戦初の5連勝を飾った。プロ3試合目の8番中西健太外野手(22)が初安打、初打点、初本塁打、初猛打賞をマーク。4打数3安打3打点と活躍し、7点のうち5点を挙げた下位打線の象徴になった。1日巨人戦で5三振の4番小久保裕紀内野手(36)も刺激され、バックスクリーンへ12号ソロ。交流戦の貯金を「5」に増やし、首位西武追撃ムードを高めた。

 初物づくしの締めはお立ち台だった。和田から「盛大な拍手で迎えて下さい」と紹介された中西が登場し、3万人の観衆は大興奮した。「試合が始まる前にまさかこんなことになると思っていなくて、ビックリです」。自己紹介を兼ねた?

 初のヒーローインタビューでも夢見心地だった。

 現実には全方向へ快音を響かせた。2回に村中の直球を中前へ転がし、プロ5打席目で初安打。「球が速かったので」と、普段は指1本分空けるグリップをこぶし1つ分にして対応した。0-1の4回にはスライダーを左翼席最前列へ運ぶ、逆転の2ラン。プロ初打点と初本塁打の勢いは5回に続いた。2番手鎌田の直球を反対方向に打ち、右越えの二塁打で猛打賞まで記録した。ベンチの王監督も、もう笑うしかなかった。

 いかり肩から放たれる強打に加え、左腕、右腕に適応するミート力を十分にアピールした。ダイエー最後の04年ドラフトで指名され「ポスト城島」と期待されたが、打撃力を生かすため昨年9月に捕手から外野手へ転向。最初は市販のグラブでスタートした。めきめき調子を上げ、5月28日に出場選手登録。「1軍の外野手はすごい。アピールしないと生き残れない。毎日が必死です」。まだ1軍で1週間、3試合ながら毎試合、覚悟を決めている。

 4月上旬、左手首リハビリ明けの小久保が2軍調整中のこと。小久保の帽子のつばに「前後裁断」という4文字熟語を見つけ、食事に誘われた際に聞いた。中西は「今の瞬間を大切にする、っていう意味でした」。偶然にも母校・北大津の部訓「一日一生」と同じ意味だった。プロ15年目の大先輩の姿が、ダルビッシュから甲子園で2安打し、プロの道を広げた自身の原点と重なった。よりストイックになった取り組みの先に、この日が待っていた。

 サイクル安打のかかった最終打席は外野フライに終わったが、4打数3安打3打点と大暴れ。4番小久保にも1発が飛び出したが、2試合連続2ケタ安打の主役は下位打線だった。驚異の8番打者に触発され、7番以下の3人で5打点を挙げた。「少しでもチームに貢献していきたいです」。試合後、謙虚に話した中西の手には両親に届ける、初安打と初本塁打、2つのボールがギュッと握られていた。

 小斉や長谷川に続く「雁の巣産」の台頭だ。機会を見つけては中西らを直接指導する王監督も目尻を下げた。「価値あるバッティングをしてくれた。ライトオーバーの打球もすごかった。今日は中西が嫌な流れを変えてくれた。この勝利は大きい」。交流戦では初となる5連勝で、交流戦の貯金も「5」。初の交流戦Vから首位奪回というシナリオには未知数を秘めた若鷹たちの存在が欠けてはいけない。【押谷謙爾】