<巨人4-3オリックス>◇17日◇福島

 巨人が今季2度目のサヨナラ勝ちで、勝率を5割に戻した。オリックス戦の9回、1死満塁から古城茂幸内野手(32)がサヨナラ中犠飛を打った。8回に小笠原道大内野手(34)が10年連続2ケタ本塁打となる値千金の同点10号ソロを右翼席に打ち込みサヨナラの流れをつくった。巨人は4度目の5割復帰で、18日オリックス戦に5度目の初貯金に挑む。

 サムライと呼ばれる男らしいひと振りだった。1点リードされた8回裏2死。巨人小笠原は3球続いた低めのフォークボールをフルスイングした。見逃せばボールの難しい球。バットを下から出し、つかまえた。試合開始直前まで天日干ししていた相棒を振り切ると、乾いた打球音を残し右中間で弾んだ。「まぐれだよ、まぐれ。何とか食らいついていこうと思っていた」。“らしい”技で放った同点10号本塁打を、謙遜(けんそん)して振り返った。

 サヨナラ犠飛の古城は日本ハム時代の同僚。並んでお立ち台に立った。「なかなか来ることができない球場で打ててうれしいです。明日からも全神経を集中して戦っていきます…」。福島のファンの絶叫で静かな声が途中から聞こえない。興奮する後輩に主役を譲った。プレー以外では控えめな姿も小笠原らしかった。

 背中で仲間を引っ張る。オフに手術した左ひざをかばい、引きずって歩く姿が習慣になってしまった。東京ドームの通路で痛々しい姿を見つけ、主将の阿部は思った。「体を痛めつけて、小笠原さんは頑張っている。生え抜きの自分たちが奮起しないと」。繊細な感覚を大切にする小笠原は、レガーズやひじ当てなどを体につけることを極端に嫌う。だが今季、ユニホームの下には右太ももにサポーターが巻かれている。この日のように冷え込む屋外のナイターでは、両ももの裏にカイロもはる。流儀に逆らってもグラウンドに立ち続けることで、チームを鼓舞し続けている。

 敗色濃厚からのアーチは今季2度目のサヨナラ勝ちの呼び水。と同時に、小笠原自身にとっては10年連続の2ケタ本塁打となった。原監督は「あの場面での同点アーチ。あれが大きい。価値がある」と節目の一撃を5割復帰のポイントに挙げた。続けて「持ち味である勝負強さを見せてくれた」と念を押し絶賛していた。【宮下敬至】