<巨人1-9中日>◇24日◇東京ドーム

 中日山本昌投手(43)が2安打1失点で完投勝ちし、史上最年長43歳0カ月で2ケタ勝利を達成した。自らが持つ完投勝ちの最年長記録も更新。打線の援護に守られながら最後まで強気な投球を貫き、巨人戦通算勝ち星も歴代単独3位の40勝とした。4日にプロ野球24人目の通算200勝を巨人戦で達成してから勢いがつき、97年以来の7連勝。衰えを知らない熟年パワーで、3位に甘んじるチームをけん引する。

 驚異の43歳、山本昌がマウンドに仁王立ちした。9回、最後は小笠原を右飛に打ち取る。自身11年ぶりの7連勝で今季10勝目。43歳のシーズンで2ケタ勝利は05年に巨人工藤(現横浜)が達成した42歳を抜いて史上最年長記録となった。「トシのことは気にせず頑張っているんだけど、そういうのはついてくるね」。わずか2安打1失点、104球の完投勝利で、4日に更新したばかりの最年長完投記録もわずか20日後に再更新してみせた。

 初回2死から小笠原にソロを浴びたが、それ以降は6回まで1人の走者も許さなかった。「最初はフワフワした感じ。その後にタイミングをつかめた」。7回に自身の失策で走者を許したが、ラミレスを内角高めの直球で左飛、谷は内角低めのスクリューで中飛。1発のリスクが高い東京ドームでも絶対的な制球力ですきを見せなかった。強力打線を技でねじ伏せ、通算勝利では堀内(巨人)に並ぶ203勝目。巨人戦通算は40勝目で歴代単独3位となった。

 25年目で10度目の2ケタ勝利。山本昌にはいつも心に留めている言葉がある。「野球は握力より学力」。150キロの剛速球は投げられないが、その分、投球のメカニズムを徹底的に研究してきた。自身と同じく最年長記録を次々と塗り替えてきた工藤との違いをこう表現する。「工藤さんより僕の方が力のいらない投げ方をしている」。多くの投手は腕をトップの位置まで上げる時に上腕から始動する。だが、山本昌はより体に近い肩甲骨から始動するため肩、ひじにかかる負荷が少ないという。43歳にして全盛時と変わらない球を投げ続けられるのは力に頼らなかったからだ。

 これで8月は負けなしの4勝目。次は大野(広島)の41歳8カ月を抜いて史上最年長での月間MVPが見えてきた。山本昌にはまだ年齢的な限界は見えてこない。【鈴木忠平】