<CS第2ステージ:西武4-7日本ハム>◇第3戦◇19日◇西武ドーム

 日本ハム梨田昌孝監督(55)が大胆采配で西武に快勝、対戦成績を2勝2敗のタイに戻した。好調の鶴岡慎也捕手(27)をプロ初の2番に起用するなど、今季初の先発オーダーが機能し、7得点。継投策も的中した。稲葉篤紀外野手(36)不在の穴を埋める用兵の妙で、3年連続の日本シリーズ進出の夢を大きくふくらませた。

 梨田監督が、ビックリ仰天のオーダーによる横綱相撲で西武を一蹴。公式戦で1度もない、ぶっつけ本番のラインアップで白星をたぐり寄せた。「大したことじゃない」。真顔で謙遜(けんそん)するが、頭脳と勘をフル稼働させた1勝の重みが凝縮されていた。

 苦肉の策が、完ぺきな奇策になった。左ふくらはぎ肉離れで欠場した稲葉不在の3番に田中が座ったことで空いた2番に、鶴岡を抜てき。「パズルで入るところがないから入れただけ」。前日の試合後、バス移動の車中で、ひらめいたという。鶴岡が「(2番は)人生で初めて。予想なんて、するわけないじゃないですか」と、動揺するほどの用兵だった。

 起用が、ピタリとはまった。3回1死二塁から左前打でチャンスを広げ、一挙4点のビッグイニングを演出。8回にも追加点につながる犠打と、つなぎ役を完遂した。CS第1Sからこの日まで5打数2安打2打点の好調を、この日も維持。12打数7安打と帆足に相性抜群の小谷野が、昇格した4番で2安打。前日まで4戦2発のスレッジは5番で3ランと打線は機能した。

 最大の「鶴岡効果」はディフェンス面。この日一塁の高橋を捕手起用する案もあったが、内角中心に攻める強気のリードを評価。先発の技巧派先発武田勝の130キロ台の直球で、中島と中村ら右打者の懐をえぐった。「ダルが抑えたのを、再利用していたな」。指揮官が繰り出した一手は攻守に効いた。

 第1戦でのダルビッシュ先発を回避し、大敗した。球団にはファンから采配批判のメールが殺到。初戦必勝の短期決戦の定石を破る起用法に非難が集中した。この日も結果的に敗れれば…というタクトだったが、成功させた。4回まで無安打も、5回に3安打を集中された時点で武田勝に見切りをつけ、6回以降は継投策。2戦連続欠場、代打でも出番なしの稲葉が「このままオレがいない方がいいかも」と言うほど、采配がさえての連勝となった。

 実際の対戦で2勝1敗とリードし、アドバンテージを含めても西武と並んだ。最終第6戦はダルビッシュが先発予定。そこまでの2戦で1勝すれば、絶対エースが控えているだけに“王手”と言える状況に持ち込んだ。梨田監督は“奇跡”へのパズルに足りない白星を、また1つ、剛腕で埋め込んだ。【高山通史】