<日本シリーズ:巨人2-3西武>◇第7戦◇9日◇東京ドーム

 西武が「完全救援」で逆転劇を呼び込んだ。2回2失点で降板した先発西口文也投手(36)を3回からリリーフした石井一久(35)涌井秀章(22)星野智樹(31)アレックス・グラマン(30)が巨人打線をパーフェクトに封じ込んだ。前日の岸に続き、この日も中2日で涌井を投入し、2回4奪三振と期待に応えた。超豪華リレーがズバリとはまり、逆転へのレールを敷いた。

 エースでも初の日本一の歓喜に変わりない。3回からの完全リレーを構築した涌井は、石井一と歓喜の輪への競争に出る。胴上げ投手のグラマンに行くと思いきや、遊撃の中島に飛び込んだ。「グラマンには(石井)カズさんの方が速かったんで。だって転がった瞬間、飛び出してるんですよ」。優勝経験豊富な左腕のダッシュ力を、ちゃめっけたっぷりに驚いた。

 マウンドでのクールな表情とは全く違う感情があった。8日には岸がロング救援し逆王手。「テレビで見ていて、ああいうふうに勝ちたいと思った。自分も投げたいと」と話す。試合前からブルペン待機したが、先発の西口が2回2失点降板。「西口さんがああいう形で降りたんで準備はできていた。いつもより気合は入っていた」という。

 やり残しがあった。初戦は8回1失点の圧巻白星。だが第5戦は7回に5連打を浴びKOされ敗戦。「連打でKOされたし、本当に悔しかった。絶対やってやろうと思った」とリベンジの場でもあった。2番手・石井一が2回完全で運んできた流れにも乗る。6回には前回痛い目にあったラミレスをスライダーで空振り三振。2回を4奪三振で星野、グラマンのパーフェクト継投を現実にした。

 中2日でも全く問題はなかった。横浜高の先輩でもあるレッドソックス松坂が目を見張るランニング量が無尽蔵のスタミナを支える。ポール間を何度も往復する姿は、球団の垣根を越え凝視される。今年8月の北京五輪前にはともに日本代表だった楽天田中がランニングに付き合うようになった。「あいつも走るようになりましたね」と年下の視線を全身で受け止めた。

 前日には松坂からメールが届いた。「絶対優勝しろよ」。短い言葉をかみしめた。大先輩に少しだけ近づいた感覚はあるのか-。「まだですよ。今年の成績じゃ」。球場を出る前には「早く(ゲームの)『ボンバーマン』がやりたい」と真顔で答えた。日本一チームのエースは切り替えが早い。越えていく壁が、まだまだ山積している証しだった。【今井貴久】