巨人の第16代選手会長に阿部慎之助捕手(29)が就任することが25日、分かった。今季は二岡智宏内野手(32)が務めていたが、日本ハムへトレード移籍。“空席”となっていたが、主将を務める男に白羽の矢が立った。主将との兼任は76年の柴田勲以来、4人目の名誉。チームメートからの信頼も厚く、北京五輪日本代表に選出されるなど実績も十分。初代の長嶋から王、原、松井秀など生え抜きスターたちが務めてきた重要ポストに新たな顔が誕生する。

 キャプテン阿部が、男の決断を下した。空位となっていた選手会長に、自らが就任する。「至らない点もあるかと思いますが、日本一奪回に向けたチームのまとめ役をしっかり務めたいと思います」。責任の重さを感じつつ、はっきりとした口調で言い切った。

 選手会長はグラウンド内外にわたってナインからの要望を聞き入れ、労組プロ野球選手会の会合にも出席する。また、キャプテンは試合でのまとめ役を求められる。「一人二役」と労力は倍増するが実績、チームからの信頼度を考慮すれば、兼任も自然の流れといえる。28日に行われる球団納会の席で、原監督に報告し、来年1月下旬に承認される。

 責任感の強い男だ。象徴的なシーンが、日本シリーズでの奮闘劇だった。10月10日、最大13ゲーム差をひっくり返してリーグ連覇を決めたヤクルト戦で右肩を負傷。クライマックスシリーズ(CS)はもちろん日本シリーズも絶望視されていた。しかし、あきらめることなくリハビリを開始。中日とのCSは欠場したが、「どういった形でもベンチ入りしてほしい」という原監督の意向もあり、代打とDHで日本シリーズに強行出場。第5戦では西武涌井から同点のソロ本塁打を放つなど、チームの勝利に貢献した。

 長嶋、王、柴田以来の主将兼任になる。これまでもミーティングでは常に中心に立ち、強烈なキャプテンシーでチームを鼓舞してきた。10月8日阪神戦の試合後には、選手だけのミーティングを開き「今日の勝利はうれしいけど、これからの3試合、気持ちを入れ替えてやろう」と、声を張り上げた。若手の坂本を後継者に指名し、グアム自主トレへの参加を呼び掛けるなど、後輩への心配りも忘れない。坂本は「阿部さんの言葉には重みがある。心に響いてくるし、やってやろうという気持ちになる」と、影響を受けている。

 選手会長は初代の長嶋から王、原、松井と超一流プレーヤーが引き継いできた。現在はWBC出場に向け、懸命に右肩のリハビリを続けている。世界一と日本一奪回。壮大な目標に向け、新選手会長が大車輪の活躍を見せる。