世界一の経験をシーズンに生かす-。日本代表としてWBCに出場していた広島栗原健太内野手(27)が26日、広島に戻った。この日は練習は行わなかったが、新球場を訪れブラウン監督に優勝報告。金メダルを手に最高の笑顔をみせた。「優勝できたことがよかった。あの雰囲気でやれたことはいい経験」。27日の対ソフトバンクとのオープン戦には出場予定。世界の舞台を経験し、また大きくなった栗原は開幕に向け前進していく。

 打てなかった。それでもすがすがしい表情で栗原は帰ってきた。優勝の瞬間、歓喜の輪にも加わった。負傷した横浜村田の代役として緊急招集がかかり、急きょ渡米。初めて打席に立ったのは準決勝米国戦。7回、代打で登場すると初球から思いっ切り振った。結局3度振っての空振り三振。「知らない投手だったから、どんどん振っていこうと思っていた」。世界の舞台で、フルスイングして戻ってきた。

 決勝戦は「7番指名打者」で先発。2回の第1打席は三振。そして3回、1死満塁の好機で三塁への併殺打に終わった。通算3打数無安打。数字にはそう残った。それでも栗原は前を向いた。「優勝できて本当によかった。メダルももらえたしね。あの雰囲気の中でやれたことはいい経験です。結果は出なかったけど、僕なりに全力でやった」。打ちたかった-。表情からは多少の無念さも感じられた。

 宮崎合宿で、日本代表候補は最終的に28人に絞り込まれた。そして栗原は落選した。一度はあきらめ、シーズンに向けて切り替えた。オープン戦でも好調を維持していた矢先の緊急招集。気持ちを整理する時間もないまま、渡米し打席に立った。キャンプ中には「WBCに出場できたら最高。その場に立ったら冷静ではいられないかもしれないけれど、自分の打撃をするだけ」と語っていた栗原。結果だけをみれば無安打だった。しかし、その場所にいたことに価値があり、今後の野球人生の中で財産になるはずだ。

 ブラウン監督は「金メダルをみせてもらった。『また頑張ろう』と言ったんだ」と笑顔を浮かべた。栗原はこの日、監督に27日のソフトバンク戦から出場する意志を伝えた。「ああいう雰囲気を経験できたことは、例えば日本シリーズに出場したら生きてくると思う」。世界一の経験が、カープに還元されるはずだ。【網

 孝広】

 [2009年3月27日12時24分

 紙面から]ソーシャルブックマーク