<日本ハム9-1ロッテ>◇7日◇東京ドーム

 お通夜のように、どんよりした日本ハム・ベンチが突然、カーニバル状態になった。1回無死一、三塁。先発多田野が先頭打者から連続安打で、ピンチを背負った。続くは中軸、先制点献上は、もう目前だった。橋本将の浅い飛球を、左翼手のスレッジが前進してキャッチ。三塁走者、俊足の早川がタッチアップした。「最低、1点は覚悟しないといけない場面」。梨田監督も腹をくくったが、ミラクルが起きた。

 スレッジが素早く中継に入った三塁手・小谷野へ送球し、捕手・鶴岡へ。流れるようなカットプレーで先制点を防ぐと、さらにドラマが待っていた。倒れ込みながらタッチした鶴岡の視界に、二塁へスタートを切った福浦の姿が目に入る。二塁手・田中へ冷静にストライク返球で刺した。日本ハムが06年のロッテ戦で決めて以来、3年ぶりのトリプルプレーが完成。1回表、打者3人の「最速達成」はパ・リーグでは、54年ぶりという、おまけ付きだった。

 球春到来まもないことから起きたといえる、まさに春の珍事だった。スレッジが来日2年目で外野手としては初補殺。昨季は主に一塁、DH起用で、左翼は23試合の出場。今季から打力ある新加入の二岡、ヒメネスを生かすため、開幕から左翼を任されることになった。送球能力については、ほぼノーデータに近い状態。早川も「スレッジをなめていたかな。あんなにコントロールがいいとは思わなかった」と明かした。攻撃重視の布陣が、守備でラッキーな副産物をもたらした。

 開幕から3戦連続で初回に失点し連敗してきたが、ビッグプレーで一気に好転。梨田監督は「守りで勝った」と大勝へとつながったスパイスの1つに挙げた。起点になったスレッジは日米通じて初めて達成しただけに「珍しいプレーができ、誇りに思うよ」とご満悦だ。53年ぶりの本拠地開幕3連敗のダメージを、リーグ54年ぶりの珍記録で解消。失速ムードをはね返す、逆風の春一番になる予感が漂ってきた。【高山通史】

 [2009年4月8日11時21分

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