<阪神7-1広島>◇14日◇甲子園

 「6番ライト」は渡さない-、桜井広大外野手(25)が今季初の猛打賞で2打点を挙げ、真弓監督にポジション死守を強烈にアピールした。ライバルで2軍調整中のメンチはウエスタン・ソフトバンク戦で3戦11打数8安打、2本塁打、8打点と猛烈なデモンストレーションを展開し、15日からのヤクルト戦(神宮)での1軍昇格が決定。危機感をバネに桜井が、チームの爆勝を呼び込んだ。し烈な右翼争いが、チーム浮上のきっかけとなるかも。

 久々の感覚だ。無数のフラッシュを浴びた。「最高ですね」と言いながら、桜井は表情を崩さなかった。2軍でメンチが大爆発し、1軍昇格が決定。再び右翼戦争が勃発する。開戦を翌日に控え、その目はギラついたままだった。

 3安打2打点が宣戦布告の合図だ。2点リードの3回2死一、三塁。フルカウントから前田健の外角高め147キロ直球をセンター返し。3点目をたたき出した。4点リードの5回2死一塁。今度は2番手大島の外角高め137キロ直球を振り抜き、ライナーの左中間二塁打で5点目を奪う。7点リードの7回2死では右中間二塁打。07年8月22日ヤクルト戦(神宮)以来、631日ぶり3度目の猛打賞だ。振り回すだけではない。ボールに逆らわない進化したスタイルを披露した。

 練習中のフリー打撃。これをじっくり見れば、桜井の進化が実感できる。今年1月。桜井は沖縄・宜野座で自主トレを行った。後輩の高橋勇外野手に加え、飛行機代などを負担してまで水落打撃投手を帯同した。約10日間、朝から晩まで3人暮らし。同じ宿舎に寝泊まりし、ひたすらバットを振る。そんな毎日の中で、水落打撃投手はある変化に気づいた。

 「インコースの球、高めの球を打ってくれるようになりました。去年とは全然違いますね」。

 昨年までの桜井は、苦手とするストライクゾーンぎりぎりのインコース、高めの球に手をださない、あるいは手が出ないシーンが目立った。だが今季は自然と体が反応する。「上からたたく意識でやっているからですかね」。

 桜井自身も「苦手克服」に手ごたえをつかんだ。以前、「技術は練習で染みこませるもの。試合では気持ち、精神力が大事」と話したことがある。練習中からの「たたく」という強い意識づけが、どんなゾーンにも対応できるニュースタイルを作った。

 そんな若虎に対する真弓監督の期待度は、この日の先発起用にも表れている。広島先発は右腕前田健。それでも左打者の林、葛城を差し置き、スタメンに名を連ねた。首脳陣の思いを意気に感じ、母校PL学園の後輩を打った。2日連続で1得点。前日13日は延長10回に守護神藤川が決勝打を浴びて惜敗していた。「昨日は悔しい負け。絶対に勝つという気持ちだった」。そんな思いをバットに乗せた。

 メンチが1軍に再合流することで、指揮官は高いレベルでのレギュラー争いを期待した。「桜井は打球が上がってきて長打も出るようになった。これから2人の様子を見ながら、どちらを使うかになる。こういう悩みは良い悩みだね」。もちろん、助っ人に負けるつもりはない。「チャンスをいただいている。その中でしっかりアピールしたい」。謙虚に、それでいて力強く、桜井が真っ向勝負を受けて立つ。【佐井陽介】

 [2009年5月15日12時38分

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