<フレッシュオールスター:全ウ0-7全イ>◇23日◇札幌ドーム

 やっぱり何かを持っている。イースタン・リーグ選抜がウエスタン・リーグ選抜に7-0で快勝。MVPは2安打1盗塁2打点の日本ハム中田翔内野手(20)が受賞し、賞金100万円を獲得した。期待された本塁打こそ出なかったが、ハツラツプレーでスタープレーヤーへの登竜門を突破した。

 少しはにかみながら、それでもわき上がる感情は抑えきれない。日本ハム中田が笑顔で賞金ボードを掲げた。“宣言通り”のMVP獲得。「こっち(札幌)に来る前に、そういうこと(MVP宣言)は言っていたけど、本当に取れるとは思っていなかった…。(運を)持ってます。ファイターズファンもたくさんいる中で、元気な姿を見せられてよかったです」。過去にはマリナーズ・イチローやヤクルト青木も獲得したスターへの登竜門。怪物にまた1つ勲章が加わった。

 「楽しんでやる」と、試合前から何度もそう口にした。だが、心の中では違った。2回の第1打席は阪神蕭一傑のオール直球勝負に豪快な空振り三振を喫した。「あの打席は実はホームランを狙ってました。でも変に狙い過ぎたら当たらないことがわかった」と笑った。「1発で100万円」の“脚本”に軌道修正を加えた。

 4回にはソフトバンク巽の初球ストレートを左翼線にはじき返し二塁打。「いつものように上からたたくイメージでいったらうまくいった」。1打席目の力みは消えていた。6回には四球で出塁すると、すかさず二盗に成功。「あれは完ぺきに盗みましたね。(普段は)走る選手ではないんだけど」とニヤリ。自画自賛の好走塁で、スタンドを驚かせた。

 MVPを決定づけたのは巨人橋本と大田がつくった7回1死二、三塁の好機。オリックス仁藤の外よりの直球を、左手1本で左翼フェンス手前まで運んだ。「橋本くんと大田くんがまわしてくれたので、絶対打ちたいと思った」と喜んだように、後輩のおぜん立てをきっちりと“いただき”、試合後は、本拠地札幌ドームでのお立ち台も初体験した。

 小遣い30万円と公言するが、手にした賞金100万円。「使い道?

 何も考えてなかったんで、これから考えます」と、あくまでも謙虚だ。実は先発投手だった日本ハム土屋には事前に「ファーストには打たせるなよ」と耳打ちしてあった。今季も7失策と課題の守備で「マイナスポイント」をつくらないための作戦。実際は本気で主役を狙っていた。

 有言実行で手にした勲章だが、目指すべきところはもっと上にある。「(MVPは)光栄なことだけど、これは思い出にして、次からまたファームで結果を残していきたい。早く認めてもらえるようにがんばります」。思い描く“シナリオ”には、まだ続きがある。【本間翼】

 [2009年7月24日8時20分

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