<オールスターゲーム:全セ4-7全パ>◇25日◇マツダスタジアム

 ソフトバンク松中信彦外野手(35)が2打席連続本塁打で、初の球宴最優秀選手賞(MVP)を獲得した。6回無死二塁だ。カウント2-1から中日吉見の内角スライダーに両腕をたたみ、バットを内側から出した。最後は右手1本でボールの表面を内側からたたくスイング。右から左へフェードのかかった白球は右翼ポール際の内側に押し込まれた。

 「あのコースをああやって打つのはここ1、2年なかった。あれを本塁打にするのが僕の持ち味。いい打撃ができました」。4回には広島ルイスの外寄り直球をバックスクリーン左へはじき返す同点ソロを放っており、2打席連発だ。

 第1戦(札幌ドーム)が行われた24日夕方から夜にかけ、九州・中国地方が猛烈な雨に襲われた。福岡市では1時間当たり116ミリという観測史上最大の雨量を記録。松中の自宅も避難勧告の対象地域となった。

 豪雨と戦ったのは、恵子夫人(36)だった。自宅近くに2本の河川があり、大雨による浸水被害の可能性があった。夫人は腎臓病の「ネフローゼ症候群」のため入院中の次男に付き添っていたが、危険な豪雨の中を帰宅。松中がこれまでに得た数々のトロフィーやメダルなどの大事な記念品を守ってくれた。

 「ちょうど(午後)11時くらいが満潮で、危なかったんですよ。妻が病院に行ってて飛んで帰って、1階にあったトロフィーやメダルを(浸水に備えて)上(2階)に上げてくれたそうです」。第1戦後、夫人からの電話で、状況を知った。心身とも疲労の重なる愛妻を元気づけたい一心でバットを振り抜いた。

 お立ち台には長男と一緒に上がった。「息子が来てたので、目の前で打てて良かったです。パパやったよ」。10度目の球宴出場でつかんだ初のMVP。お立ち台で見つめ合う親子の目がキラキラと輝いた。

 [2009年7月26日8時55分

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