雪深い富山で、19歳がつらい決断を下した。「もう野球はやめます」。在籍わずか2年で戦力外通告を受けたソフトバンク藤井翼内野手(19)は、野球と決別することにした。今、実家に戻って自分が進むべき道を探している。

 まさかの通告だった。今秋のフェニックスリーグで3位の4本塁打を放ち、来季への手応えをつかんだ直後の10月末。「ショックでした」。心配した友人らが何度も携帯電話を鳴らしたが、一時は音信不通になった。ようやく冷静になれたのは実家へ戻ってから。球団側から育成選手としての再契約も打診されたが「僕の実力が足りなかった」と受け止め、バットを置く決意をした。

 桜井高では富山県新記録の高校通算39本塁打を放ち、07年の高校生ドラフト4巡目で入団。身長189センチの恵まれた体格で「ポスト松中」としても期待されていた。2年間で1軍出場なしとはいえ早すぎる退団。だがチームへの恨み節は口にしなかった。「右も左も分からない自分だったけど、人間として形成してくれた」。鳥越2軍監督やコーチ陣に何度も立たされて説教を受けたのも、今ではいい思い出だ。

 大学や専門学校へ進学するか、就職するか。選択肢が多いのは、まだ若いからこそ。「年度の替わる4月から新しくスタートを切りたい。今度は一生続けられる仕事に就ければ」。もう声に暗さはなかった。

 [2009年12月31日10時51分

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