ホンマに遅っ!

 阪神の新戦力ケーシー・フォッサム投手(32=カブス)が早くも「魔球」を披露した。29日に西宮市のクラブハウスを訪問。室内練習場でランディ・メッセンジャー投手(28=マリナーズ)とキャッチボールを始め、さっそく最遅で約69キロというフォッサム・フリップ(カーブ)を試投した。米国よりもウエット感のある日本球がお気に入りで、さらなる進化を予告。期待が膨らむ“初投げ”だった。

 日本での成功を予感させる「魔術師」のデモンストレーションだった。来日2日目のフォッサムがキャッチボールを始めた。室内練習場に乾いたミットの音が響く。次の瞬間、よくある風景が一変した。同じ腕の振りから、ボールが指先を離れると、あまりにも遅い球が軌道を描く。ストンと落下しながら、メッセンジャーのグラブに収まった。「カーブの回転を試しながら、投げたよ。肩が温まれば、もっといろんな球種が投げられるようになる」。自ら命名した超遅球フォッサム・フリップを早くも披露。周囲のド肝を抜いて、ニヤリと笑った。

 この日は甲子園球場に隣接するクラブハウスと訪問。持参したジャージー姿で、さっそく来日初練習に取りかかった。ダッシュの後に行ったキャッチボールは約20分間、ていねいに1球ずつ投じた。報道陣の注目を集める中で、自らの胸中にあるのは好感触だった。「(米国でも)感覚を確かめてきたよ。米国の球は乾燥しているけど、日本のボールは縫い目の触り具合がしっくりくる。指にしっかりハマる。ベリー・グッド!

 すごくいいことだと思う」。契約が決まった時点で球団から与えられた日本の使用球が、魔球にさらなる進化をもたらす可能性がある。

 キャッチボールだけで評価するのは早計だが、期待が膨らむ“初投げ”だった。米国で計測した最遅の球速は69キロ。フォッサムの自己申告は偽りではなさそうだ。キャンプ、オープン戦をへて、最速156キロと言われる直球を磨くことが必要だが、この緩急はやはり魅力的だ。井川が直球とチェンジアップで大ブレークしたように、日本球界で飛躍する要素は持っている。

 「こんなに恵まれた所で練習できるとは思わなかった。(時差ボケも)もう少しで完全に乗り越えられる」。前日28日は新居や子どもが通う学校をチェック。新天地の環境を素早く整えて、順応しようという姿勢をうかがわせた。さあキャンプ地の沖縄へ。魔球使いのサウスポーがファンを喜ばせる日は目前に迫っている。

 [2010年1月30日11時45分

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