<巨人6-1広島>◇17日◇東京ドーム

 晴れて「巨人の星」が誕生した。育成ドラフト1位の左腕、巨人星野真澄投手(25=BCリーグ・信濃)が17日、支配下選手登録されることが決定した。育成選手が1年目で支配下選手登録され、開幕1軍メンバーに入るのは球団初。この日、東京ドームでの広島戦に3番手で登板し、1回1安打無失点2奪三振。背番号も「100」から念願の2ケタ「95」に変更され、開幕1軍入りも当確となった。「山口2世」と呼ばれ続けた男が、開幕前に新たな1歩を踏み出した。

 手にしたチャンスは、左手にしっかりとつかんで離さなかった。支配下昇格への最終試験。星野は目いっぱいに腕を振り、抑えた。「緊張はしましたけど、打者に気持ちで負けないよう、物おじしないようにいきました」。直球、スライダー、チェンジアップ。気合が乗ったボールが、1軍レベルであることを証明した。念願の2ケタ「95」をつけるにふさわしい投球に、だれもが昇格を納得した。

 腕にからみつく重圧を、強い心で振り払った。この日、球場には契約書に押す印鑑を持参して来た。清武球団代表は「かなり強いプレッシャーをかけた。今日打たれたら(契約は)先延ばしするつもりだった」と明かした。打たれれば次のチャンスはいつ訪れるかわからない。それでもマウンドの上で、左腕は今までどおり鋭く振り抜かれた。萎縮(いしゅく)することなく、最速も144キロをマーク。原監督も「自分の力で支配下を勝ち取ったということ」と、新戦力の誕生をたたえた。

 絶対的な才能の前に、一時は心が折れかけた。愛知工大時代、1学年下には07年秋に楽天へドラフト1位で入団した長谷部がいた。後輩はアマ唯一の北京五輪アジア予選メンバー。努力を重ねても追いつかない差に「練習しても無理だと思って、一緒に野球してて嫌にもなりましたよ」ともらした。卒業後はバイタルネット、BCリーグと渡り歩いた。夢を追い続け、ようやく巨人で花開いた。

 契約金1000万円、200万増の推定年俸440万円も手にした。歓喜の瞬間も、あくまでスタートラインだ。会見では「支配下になるのが目標じゃない。ストレートで押す自分の投球を押し出したい」と誓った。原監督も「1軍で戦える選手が1人増えたということ」と開幕1軍当確を出した。求められる仕事は、先発に転向した山口の穴を埋める左のセットアッパー。大きな仕事に向けて、星野が新たな道を切り開く。【小松正明】

 [2010年3月18日9時28分

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