<横浜6-5広島>◇4日◇横浜

 「すごいのが来る」。横浜井手正太郎外野手(26)は右斜め後ろに気配を感じながら、一塁を駆け抜けた。振り向くと白い一団が、波のように水をかけてきた。手荒いサヨナラ打への祝福に、あっという間にびしょぬれになった。「水があんなに冷たいとは思わなかった。キンキンに冷えてましたよ」。4月23日にソフトバンクから移籍してきたばかりの井手にとっては、真に横浜の一員になれたことを実感する水攻めになった。

 尾花監督の耳打ちが、サヨナラ勝ちにつながった。9回無死一、二塁で、まずは武山に「相手が思いきったチャージをしてきたらバスターしていいぞ」と指示した。武山が犠打を決めておぜん立てが整うと、今度は井手に「結果を恐れずにいけ」と伝えた。井手は「打てなかったら、僕を使った監督のせいだと思って振った」と、広島高橋が併殺を狙って投げた内角低めの落ちる球を読み切って三塁線を破った。同率4位の広島を蹴落とす一打となった。

 4回に好調だった寺原が負傷降板するチームのピンチを救った。日南学園の同期だけに「テラが投げてる試合は特別な思いがありますから」という。単身赴任で奮闘する井手にとって、苦楽を共にした友人の存在は大きかった。無念の先発右腕からはロッカー室でポンと頭をたたかれた。昔からの温かな祝福もまた、うれしかった。【竹内智信】

 [2010年5月5日9時3分

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