<ロッテ0-3楽天>◇19日◇千葉マリン

 楽天がエースで白星発進だ。リーグ再開初戦のロッテ戦に先発した岩隈久志投手(29)が7回を被安打4、無失点と好投し、5月1日以来の5勝目を挙げた。ゲームメークしても白星がつかなかったが、この日は打線が効果的に援護。救援陣も盤石だった。岩隈の降板時期に対する賛否の議論がいかにむなしいものか、完勝で実証してみせた。

 2メートルで始まった千葉マリンの風速は、岩隈が7回を抑えた時には8メートルになっていた。「風を利用しながら。フォークが序盤からよく落ちた」。重厚な右打者をシュートで詰まらせた。しぶとい左打者はシンカー気味に落ちるフォークで沈めた。初夏の海風に乗って軽やかに奏でた98球。49日ぶりにエースが勝った。

 制球力同様、まったくぶれない哲学を持つ。プロ野球選手は個人事業主だが、「チームの勝利」を第一義に設定し頑として変えない。「チームを勝たせることだけ考えた」が第一声。「先制してもらいうれしかった。高須さんが守備でも助けてくれて」と感謝で結んだ。2番手小山の「クマはああいう性格だから何も言わないけど。勝たせたい思いで投げて」との言葉。先制弾の高須が「クマが勝って何より」と残した言葉。勝ち星を傍らに置く立ち居振る舞いが楽天を束ねる。

 5月22日の巨人戦。8回途中93球で降板後、逆転負けした。TBS番組で野球評論家の張本勲氏が「喝!」とジャッジ。反論したジャーナリスト江川紹子さんとの間にいざこざが生じていたことが発覚。凜(りん)とした岩隈の前で空虚な議論。加えて10年楽天にはある不文律があるだけに、降板時期の賛否論は意味を持たない。

 ベンチ裏に1枚のボードがある。手書きの1カ月分カレンダー。1、2軍の試合で投げた全投手の名前がローマ字で書かれ、登板頻度やスケジュールを一覧できる。「フレッシュな状態で送り出してあげるのが仕事」という、ブラウン監督の投手起用方針。岩隈の次回登板について指揮官は「確認してだが少し間隔が詰まる」と言った。ライバル投手陣が疲弊する夏場、状態を維持した楽天が、岩隈を中心に逆襲をかける-。白板にそんな青写真がにじんでいる。【宮下敬至】

 [2010年6月20日9時8分

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