<巨人5-2中日>◇20日◇東京ドーム

 誰も、この男を止められない。巨人阿部慎之助捕手(31)が中日9回戦(で逆転の21号2ランを放った。交流戦で10本塁打を放ったバットは、リーグ戦再開後も3試合連続の4本塁打と勢いは変わらない。6月は13戦9発。リードでも3投手を引っ張り、相手打線を散発3安打に抑えた。頼れる主将の活躍で今カードを勝ち越し、2位阪神との差を3・5ゲームに広げた。

 試合中はニコリともしなかった阿部が、ようやく穏やかな顔になった。試合後のベンチ裏。「家を出るとき、いつも娘が頑張ってと言ってくれて元気が出るんです。玄関を開けると迎えに来てくれる。今日も一緒にお風呂に入りますよ」。自宅には愛娘の眞子ちゃん(2)が待っている。父の日に、活躍できたことがうれしかった。

 自ら「今は人生で一番、いいと思っている」という打撃が勝利を呼んだ。1点を追う2回、無死二塁で中日川井から左中間に逆転の21号2ラン。逆方向の一番、深いところでも関係なし。外角低め139キロを力と術で押し込んだ。原監督をして「すごいよ!

 神の領域」と言わしめた。6月に入り2度目の3試合連続アーチ。この3連戦で計4発と中日をたたきのめした。8回には中前打。唯一、凡退した5回の一ゴロは、痛烈なライナーをブランコがかろうじて止めたもの。もう手が付けられない。

 成績だけじゃない。今季は、ここまで全試合に出場している。過酷な捕手の役回りにも「(全試合出場が)本来の目標ですから。今年は今のところ、不安なく出来ている。とにかく毎日、グラウンドに立つ。たくさんギャラをもらっているんだからさ」と笑わせた。昨季は背中の張りや腰痛に苦しみ、123試合にとどまった。体調管理にと、ちょっとした取り組みを始めた。試合前に打撃練習の合間を縫って、右打ちでノック。腰に逆方向の負荷をかけ「腰痛予防です」。ただ、逆振りでも打球がスタンドに入ることも、しばしば。外野ノックを受ける仲間をあぜんとさせている。

 絶好調でも慎重だ。「こういうとき、たいがいケガする。事故にも気を付けます。よく当たってるから(車で)当たらないように」。報道陣に笑われると「冗談で言ったんじゃないですよ」。日本一まで無事故、無ケガで。真剣に言い返したのが、責任感の強い阿部らしかった。【古川真弥】

 [2010年6月21日9時34分

 紙面から]ソーシャルブックマーク