<横浜2-3ヤクルト>◇3日◇横浜

 日本人最速161キロ右腕、ヤクルト由規投手(20)がプロ入り3年目で初の2ケタ勝利をマークした。昨年から5連敗中だった苦手横浜に完封を逃すも、9回途中6安打2失点。この日は最速155キロ止まりながら自己最多タイの11三振を奪った。2試合連続2ケタ三振に加え、6試合連続で120球以上という抜群のスタミナで、チームに貯金1をもたらした。

 謙虚な由規が醸し出す“悔しさ”が、成長の証しだった。完封目前にした9回2死満塁、下園に右前適時打を浴びて降板した。152キロの直球で押し込んでいながら、不運なポテンヒット。「でも、コースと高さが…。だからあそこに落ちるんです。あれが自分の甘さです」と自らを戒めるようにつぶやいた。最後は守護神林の助けを借りたが、プロ入り初の2ケタ勝利だった。

 次々と課題をクリアし、自己最多の勝ち星を伸ばしている。昨年、マメをつぶして途中降板したり、戦列を離れる原因になったが、今季は1度もなし。セットポジションになると10キロ近くスピードが落ち、連打を食らうケースも多かったが、走者を出してから150キロ台の球速をマークしたように弱点も克服。9回にもこの日最速となる155キロを出したように、スタミナも十分だ。完封、完投こそ逃したが、139球の快投だった。

 謎の連敗記録もストップした。「やられっぱなしで、何とかしたかった」と他球団が“カモ”にしている横浜を相手に、プロ入り1年目で勝利したが、その後は5連敗中で防御率も7・82。横浜スタジアムでも初勝利だった。「最初は意識しすぎたけど、自分のピッチングはできたと思います」と習得しつつあるチェンジアップも効果的に織り交ぜ、苦手打線をねじ伏せた。

 9月3日は母美也さんの51歳の誕生日。「今日は球場に来れなかったので、今朝メールしました。ウイニングボールをプレゼントしたかったので、何としても勝ちたかった」と、まさに孝行息子だ。今季は初完投、初完封のウイニングボールも実家に送っており、記念ボールも量産中だ。難攻不落の右腕に成長した由規が、後半戦から快進撃を続けるチームの立役者になっている。【小島信行】

 [2010年9月4日11時58分

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