<ヤクルト6-1中日>◇18日◇神宮

 怒った!

 吠えた!

 中日落合博満監督(56)が自身初の暴言による退場処分を受けた。ヤクルト戦(神宮)の5回、右翼・藤井淳至外野手(29)が右翼線付近の打球をグラブに当てて落としたが、これがフェアと判定され、決勝の2点を奪われた。ファウルだと主張した落合監督は一塁塁審に猛抗議して退場。暴言、暴行を禁じ手にしてきた指揮官が自ら禁を破るほど怒った。執念の抗議も実らず、苦手ヤクルトに今季負け越しが決定。2位阪神には1・5ゲーム差に詰め寄られた。

 ベンチを飛び出した落合監督は一塁塁審めがけて走った。目を見開き、鋭い口調で詰め寄った。いつもはすぐに冷静な口調に戻る指揮官だが、勢いは収まらない。立て続けに審判に何事かを言い放ったところで退場を宣告された。自身初の暴言による退場。宣告後も食ってかかった。それほど怒りは激しかった。

 問題の場面は1-1の同点で迎えた5回だった。2死二、三塁からヤクルト畠山の打球が右翼線付近へ飛んだ。この回、途中で野本に代わって右翼に入っていた藤井が俊足を飛ばし、ダイビングキャッチを試みたが、ボールはグラブに当たって落ちた。打球に接触したのはファウルゾーンかに見えたが、一塁塁審はフェアと判定。打球が転がる間に2点を勝ち越された。

 ファウルと思った打球がタイムリー三塁打となり、当事者の藤井が、間近で見ていた二塁手・堂上直が、捕手・小田が、懸命にファウルだと主張した。スタンドの竜党からも大ブーイングがわき起こった。3回にはバントの大島が微妙なタイミングで一塁に駆け込み、アウトと判定された。そんな伏線もあってか。落合監督は全員の怒りを背負って、猛抗議した。

 試合後、宿舎に戻った落合監督は表情をこわばらせたまま、何を聞かれても無言を貫いた。就任以来、4度の退場はすべて5分以上の抗議による遅延行為。暴言、暴行はしないのがポリシーだったが、自ら禁を破るほど怒りは大きかった。

 「フェアか、ファウルかについての抗議です。監督からお前の見解を聞かせてくれと言われた。ライン上で触ったと伝えたところ、暴言があったので、退場になりますよと伝えた」。石山一塁塁審はこう説明した。暴言内容については有隅球審が「監督の名誉もあるので」と明かさなかった。

 それでも落とした星は戻ってこない。課題の打線が館山らに6安打に封じられたのも事実。苦手ヤクルトに負け越しが決定し、鬼門神宮ではこれで1勝6敗だ。9月に入って初の連敗で2位阪神の足音も聞こえてきた。優勝へ向けた必勝態勢の中、後味の悪い敗戦だった。【鈴木忠平】

 [2010年9月19日10時57分

 紙面から]ソーシャルブックマーク