現役最年長の工藤公康投手(47)が今季限りで西武を退団し、来季も現役続行を目指すことが27日、分かった。16年ぶりに復帰した古巣で好成績を残せず、球団は来季の戦力外とする方針を決めた。すでに本人には通告済みとみられ、10月1日にも発表される見込み。実働29年のプロ野球記録を更新中の左腕に「引退」の意思はなく、国内外を問わず、移籍先を探す。

 工藤が16年ぶりに復帰した古巣を、わずか1年で去ることになった。故障に悩まされ、左ひじ痛の影響で開幕からファーム暮らしが長かった。1軍に初昇格したのは7月18日。自身が持つ実働29年のプロ最長記録を更新したが、登板10試合で0勝2敗、防御率10・50と好成績を残せなかった。8月28日に降格し、優勝争いに貢献できずに終わった。

 4球団を渡り歩いたが、今年にかける思いは特に強かった。西武はプロ入りから1度チームを離れるまで、13年で11度のリーグ優勝を経験し、長くプロで活躍する礎を築いた球団だ。

 昨年のオフ、横浜を戦力外となり、黄金時代をともに戦った2歳下の渡辺監督に必要とされた。「後輩が戦力として考えてくれているんだから、責任は重い」。補強ポイントだった左の中継ぎとして、チャンスをくれた恩を返したかった。だが不本意な投球が続いた。目前で優勝を逃した「責任」も痛感していた。

 現役時代から親交の深い渡辺監督は、戦力としての工藤を「もうちょっといいと思っていた」とシビアな目で評価した。

 小林球団社長は「戦力外については10月1日から。それ以外はコメントできません」と話した。若手育成にも寄与した功労者という点も考慮して総合的に判断したが、来季の戦力構想外を決定。正式な手順を踏んで、自由契約にする方針を固めた。

 だが工藤の情熱は失われていない。関係者には「ひじの状態はいい。(球速の出ない)西武ドームでまだ140キロ出るし、もう投げられない体になるまでやる」と話している。9月中に球団と今後の話し合いをしたとみられるが、2軍の遠征に最後まで帯同して登板したことからも、現役続行への強い決意がうかがえる。移籍先は国内外を問わず、米国、韓国、台湾でもこだわりはない。再び戻った古巣にも骨をうずめることなく、現役最年長のチャレンジはまだまだ続く。

 [2010年9月28日9時8分

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