<阪神3-4横浜>◇30日◇甲子園

 阪神鳥谷敬内野手(29)が、遊撃手としての“頂点”に上りつめた。1点リードの5回。1死二、三塁の好機で横浜大家の内角直球に力負けせず、右翼後方へ犠飛を打ち上げた。これで今季の打点が98となり、90年ヤクルト池山と並んでいた遊撃手のシーズン最多打点を更新。「毎年狙える記録じゃないので、100打点にいきたいというのはある。今は個人個人のことを言っている時じゃないけど、1試合でも早く決めたい」。そう漏らしていた男は、タイ記録からわずか2試合で新記録を作った。

 ただ「最強遊撃手」の称号を手にしても、笑顔はなかった。この日はベテラン矢野の引退試合。入団以来、守備の要とも言われるセンターラインをともに守ってきた者として、勝利で送り出したかったが、まさかの逆転負け。同時に、自力Vの可能性も消滅してしまった。「矢野さんが出られる状況にできなかったのが、本当に悔しい」。鳥谷は試合後、そう発するのがやっとだった。

 それでも、まだ優勝の可能性が完全消滅したわけではない。可能性を残す限り、最後まで全力で戦い抜く。“頂点”に上りつめたバットで、さらに得点を生み出すしかない。

 [2010年10月1日11時4分

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