<パCSファーストステージ:西武5-6ロッテ>◇第1戦◇9日◇西武ドーム

 ベテランの一振りで王手をかけた。パ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージが開幕し、ロッテが逆転勝ちで先勝した。4点を追う9回に5安打を集中して同点に追いつくと、延長11回には先頭の福浦和也内野手(34)が決勝の右越え本塁打を放った。日本シリーズ、CSなど短期決戦に強いポストシーズン男が、またも本領を発揮した。10日の第2戦でロッテが勝てば、ソフトバンクとのCSファイナルステージ(14日~・福岡ヤフードーム)進出が決まる。

 いつも冷静な福浦が右手で何度もガッツポーズした。5-5の同点で迎えた延長11回無死。土肥の2球目のスライダーをきれいにすくい上げた。打球はロッテファンの待つ右翼席に飛んでいった。シーソーゲームの行方を決める劇的な一打。「完ぺきでした。塁に出るだけ。みんなであきらめないで出し切った結果です」。無欲を強調し、控えめに笑った。

 クライマックスの名前通りの死闘だった。7回までは投手戦。終盤にドラマが待っていた。1-1の同点で迎えた8回、内の乱調で4失点。敗色濃厚となった9回、マリンガン打線が火を噴いた。3連打と里崎の中前適時打で一挙4点を奪って同点。福浦も1死一塁から中前打でつなぎ「最高です。9回みんなで追いついて、みんなでつかんだ勝利です」と勢いそのままに、最後を締めた。

 西村監督の期待にズバリ応えた。決勝ソロの場面、マウンドには左腕の土肥が登場。ベンチにはレギュラーシーズン最終戦で2安打を放った今岡が、右の代打として控えていた。それでも、西村監督は「迷いはなかった。左でも打ってくれると思った」と福浦を左打席へ送り出した。レギュラーシーズンで打率1割8分2厘しか打てていない左腕から今季初の本塁打。ベンチでは「監督の直感、スゲー」と声も上がった。対左腕は前半戦90試合で7打席だったが、後半戦54試合では48打席と大幅増。得点圏打率3割を超える勝負強い打撃力に信頼も厚かった。

 福浦のハートが、西村監督の心を揺さぶった。9月17日の仙台(Kスタ宮城)での移動日練習。同15日に右足甲を打撲し、金森打撃コーチから休養を勧められた。だが、志願して参加し、オリックスT-岡田のようなすり足打法を導入するなど、痛みを隠す方法を試行錯誤した。試合後のアイシングは欠かせず、9回に金泰均の中前打で二塁から生還した後は、右足を引きずりながらベンチへ戻った。「ケガなんて言ってられないでしょう。短期決戦なんだから」。悲壮な決意が決勝の一振りに結実した。

 ファイナルステージ進出へ西村監督は「明日勝ちにいきます」と力を込めた。延長での本塁打はCS史上初。それでも福浦は「(強運を)持ってる?

 いや里(里崎)の方がもってるよ。いきなり復帰して同点打打つんだから」と謙遜(けんそん)したが、ポストシーズン男健在を証明した。【斎藤庸裕】

 [2010年10月10日8時41分

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