楽天星野仙一新監督(63)が「マー君卒業指令」を出した。仙台市のKスタ宮城で行われている秋季練習第1クール最終日の3日、オーバーホールを終え合流した田中将大投手(22)と初対面した。フル回転を求めた上で、すっかり定着している「マー君」の愛称に重みがないと指摘した。好投手ひしめく同年代投手の代表にとどまらず、球界のエースとして君臨してもらいたい親心から出た発言で、誰もが納得する新たな代名詞の襲名を求めた。

 北京五輪以来、2年ぶりに田中と同じユニホームを着た星野監督が発したのは、愛情たっぷりのゲキだった。入団4年目で、既に46勝を挙げた右腕が、さらに成長するには何が必要か?

 報道陣にそう問われると「周りに、どう見られるか」と答えた。そのための指標として挙げたのが「呼び名」だった。「これからは『マーくん』と呼ばれないようにしないとな。ひと皮むけるか、どうか」。

 プロ入り後、すっかり定着した「マーくん」。ファンに愛されている証拠だ。もちろん、星野監督もそこは了解済み。ただ「もう20歳。立派な大人なんだから、いつまでも『マーくん』じゃないよ。何か、いいニックネームを考えてくれ」と、あえて“卒業指令”を出した。自らは「闘将」と呼ばれる。名は体を表す。球界を代表する投手にふさわしい呼ばれ方を。「すべてオレより上だ」と評価する田中のステップアップを願う親心だった。

 岩隈がポスティングで米移籍となれば当然、来季はチームの柱となる存在。求めるものは高い。「ダルビッシュや涌井の世代は出てきたが、もう1つ下の世代がもっと出てきてほしい」と、世代の中心に座ることも願った。来春には、大学を経た同世代の好投手たちがプロの門をたたく。くしくも、06年夏の甲子園決勝で投げ合った早大・斎藤は、同じパ。星野監督は田中の心情を思いやった。「自分では言いにくいだろうから、オレが言う。斎藤への意識なんてないよ。プロに入ったのは先。実績が上。比べるのが失礼だ」。

 田中も自覚十分だった。「自分から『こう呼んでください』とは言えない。周りを変えるぐらい、自分が何かをしないといけない」と力を込めた。世代代表として、球界代表として、闘将を納得させる呼び名を手に入れる。【古川真弥】

 [2010年11月4日12時6分

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