ソフトバンクのチーム打撃3冠、多村仁志外野手(33)が15日、都内でFA宣言会見を開いた。FA申請の手続きをとったことを明かし、大リーグを含め、獲得に名乗りをあげた日米全球団と交渉することを宣言。4年契約を目指すなど複数年契約にこだわりを持つ多村サイドと、単年ごとの契約を重視するソフトバンクとは契約年数、金銭面両で隔たりがあり、ホークスにとっては流出危機が高まった。

 多村が所属球団を決定する際、最も重視する点を、しっかりと言葉にした。13日夜に郵送でFA申請手続きを済ませ、この日都内で臨んだFA会見。気持ちに一段落ついたのか、表情はさっぱりしたものだった。

 「リーグ関係なく、自分の価値観と球団の価値観が一致したところでプレーしたい」、「野球をやっている以上、強いチームでやりたい」、「複数年契約がいい。この4年、単身赴任。複数年してくれるなら、それが一番。選手としてはこだわりがある」。

 列挙した中で、まず求めているのは複数年契約。関係者の話を総合するとFA再取得までの4年契約を希望しているようだ。ただ、ホークスは単年契約重視の方針。複数年でも長期を避け、2年ほどプレー期間を保証する契約を導入する方向。多村は、FA宣言にいたった理由を「何度かの交渉で(ホークスには)誠意ある対応をしていただいている。価値観にズレがあるのかな、というところですね」と表現。今季打撃3部門でチームトップの活躍を残しただけに、球団提示に不満を抱いていることをにおわせた。さらに金銭面でも開きがある。

 多村側は基本年俸の大幅アップが希望。今季推定年俸が1億2000万プラス出来高であることも分かったが、球団は新たに大幅なインセンティブ契約を組み直すことで総額2億円超の提示をしているようだ。ただ、基本年俸は現状維持ベースで推移。現時点では両者間で着地点が見られず、流出危機に陥っている。

 多村は今後、日米全球団に門戸を開く。「(自分に)どのような価値があるのか純粋に聞きたい。どのリーグでもお話いただけるのであれば、感謝して対応したい」。長期戦を覚悟し、レギュラー保証を求めることもないという。ソフトバンクとも交渉は続けるが、他球団の評価に気持ちが傾くのは間違いなさそうだ。

 「自分と同じ価値観をもった球団でやれるのか。そこで精いっぱいやりたいと思っている」。

 この日、会見場に選んだのは都内でトレーニングを続けているジム。すでに来季を見据えたスタートも、多村は切っている。

 [2010年11月16日9時26分

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