<オープン戦:中日5-3オリックス>◇5日◇ナゴヤドーム

 09年は4番だった中日トニ・ブランコ内野手(30)がオリックス戦でオープン戦初安打を含む3安打を放った。来日3年目で初めて6番起用。5番グスマンとの連打でチャンスメークし、勝利を呼び込んだ。グスマンとの競争でハングリー精神を取り戻した大砲が6番に座れば最強打線が完成する。

 スコアボードに並んだ名前を見るだけで迫力が伝わってきた。本拠地初戦、落合監督は超攻撃型オーダーを組んできた。その象徴が3番森野、4番和田、5番グスマン、そして6番ブランコ。相手を震え上がらせる重量打線が火を吹いたのは2回だった。

 先頭グスマンが中前打で出塁すると、6番ブランコはオリックス朴賛浩の内角変化球を引きつけて右方向へ運んだ。オープン戦初安打となる右前打で一、三塁とチャンスを広げた。

 3回にも左前打のグスマンを一塁に置くと、今度は直球につまりながらも力で右前に落として一、三塁。いずれも大島のタイムリーで得点に結びついた。

 5回には2番手西から中前打を放って猛打賞だ。新しいオレ竜打線は韓国の英雄朴から5得点を奪った。その中心が「6番ブランコ」だった。

 「日に日に状態はよくなってきているよ。次はきょうよりも、いいはずだ」。

 落合監督の無言のタクトが、ハングリー精神をよみがえらせた。実戦では、パワーだけでなく、状況に応じた打撃を見せる新外国人グスマンを一塁で起用。キャンプ中に右肩を痛めるなど精彩を欠いたブランコは指名打者か、右翼に追いやられた。

 定位置を奪われたB砲の目の色が変わった。オープン戦は8打数無安打だったが、初めて一塁で起用されたこの日、必死にボールに食らいついた。

 「ブランコも必死だ。今までは本塁打を狙って空振りしていたけど、空振りしないように引きつけて打っていた。監督は何も言わないけど、本人が一番よくわかっているんじゃない」。

 辻総合コーチは、明らかにブランコが昨年と違うことを指摘した。来日1年目の09年に本塁打、打点の2冠を獲得したが、昨年は無冠に終わった。リーグ最多158個の三振で流れを切ってしまう場面も目立った。落合監督の選手起用から危機を察知し、自ら“変身”した。

 昨季までの得点力不足は6番打者が固定できなかったことが大きな要因。広いナゴヤドームを生かした守りの野球が落合竜の真骨頂だが、この日、試した右翼グスマン、一塁ブランコならば守備のリスクを最小限に抑え、打線を強化できる。「6番ブランコ」が象徴する強力打線は、連覇へ向けての大きな武器となりそうだ。【鈴木忠平】