いつも冷静沈着な男が、対抗心を隠そうとしない。4年連続で開幕投手を務める西武涌井秀章投手(24)が日本ハム・ダルビッシュ有投手(24)との投げ合いを目前に控え、並々ならぬ勝利への執着心をのぞかせた。「今回は相手が相手。1点取られたらそのままいってしまう可能性もある。理想は最後まで投げきること」。勝ち星はもちろん、1点もやるつもりはない。

 過去5度の直接対決は涌井の0勝3敗。エースとしてのプライドが、これをよしとしない。「一番投げ合いたい相手。まだ1回も勝っていないので、何とか勝ちたい」と1勝に飢えている。「明日は自分でもどうなっているか、楽しみでもあります」。同い年のライバルと開幕戦でぶつかる。特別なシチュエーションが自分をどれだけ高めてくれるのか。涌井にとっても未知の領域だ。

 涌井自身、現在開幕は2連勝中。前身の西鉄時代には稲尾が60~63年に4連勝しているが、3連勝なら西武では初となる。3月10日の阪神とのオープン戦後に開幕投手を告げたという渡辺監督も「去年クライマックスに負けた次の日(10月11日)には涌井に決めてた。早く契約しろと思ってました」とブラックジョークを交えて全幅の信頼を示し、自信をもって送り出す。昨季1度も実現しなかったダルビッシュとの対決。11年シーズンの幕開けにふさわしい快投で、悲願の“初勝利”を手にする。【亀山泰宏】